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新しい業務で必要なデジタル化要件を具体化するには、まず、プロセスの異なる「業務場面」ごとに業務フローを作成する。今回は、新しい業務を設計してデジタル化要件を具体化する方法を解説する。

 本連載では、デジタル技術を使って業務を改革し、生産性を高めたり新たな付加価値を創出したりする「業務改革型DX(以下、DX)」の進め方を解説しています。

 今回と次回は、DXの対象範囲全体を対象に新しい業務の仕組みを設計し、そこで必要なデジタル技術を活用したシステム化の要件(デジタル化要件)を検討、決定するステップ5「デジタル化要件の整理」の進め方を解説します。

 今回も、ITベンダーの中堅SE村山さんが担当する架空の事例、マイルス精工の「工場DXプロジェクト」を交えて学んでいきましょう。

 日経ITソリューションズの村山は、解決策の素案を作成して、業務部門の代表者であるプロジェクトリーダー(PL)と検討メンバーにレビューし、そこで受けた指摘を反映して解決策の承認を得た。その報告と今後の進め方を相談するため、超上流工程の専門家である先輩SEの工藤を訪ねた。

「PLと検討メンバーから解決策の承認をもらいました」

「新しい業務で現状と何が変わるのか理解してもらえたかな」

 工藤が穏やかな表情で質問した。

「はい。解決策の効果や実現性を理解してもらえたと思います」

「それはよかった」

 工藤が笑顔でうなずいた。

「次は新しい業務フローを設計してデジタル化する内容を具体化します」

「そうか。業務フローを設計する前に業務場面を洗い出すことが重要だよ」

 工藤は村山を見つめながら言った。

「業務場面ですか」

 村山は不思議そうな顔で質問した。

「そうだ。同じ業務機能でも商品や顧客によってプロセスが異なることがあるからね」

 工藤の説明を聞いても村山は腑に落ちない様子だ。

「詳しく教えてください」

「OK。説明しよう」