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一般に、業務部門はDXに対して積極的ではないことが多い。また、DXの成果物を個別に作成するには多大な手間や時間がかかる。今回は、業務部門から理解を得る方法と、先行事例を使った検討方法を解説する。

 一般に、業務部門はデジタル技術を十分に理解していないことが多く、これまでデジタル技術を使わずに業務を行ってきました。そのため、業務部門はDXに積極的ではないことが多く、新しい業務やシステムを定着化させて成果を上げるには、理解と協力を取り付けることが重要です。

 また、DXは多くのITエンジニアにとっても新しい取り組みなので、DXの検討に必要な各種の成果物を作成するのに多くの手間や時間を要します。そのため、他の企業や他の部門で同じような取り組みをした先行事例があれば、そこでの成果物を参考にして検討を進めるのが有効です。

 そこで今回は、前半で業務部門からDXの取り組みに理解と協力を取り付ける方法を、後半で先行事例の成果物を使ってDXの検討を効率的に進める方法を解説します。今回も、日経ITソリューションズの中堅SE村山さんが担当する架空の事例を交えて学んでいきましょう。

 村山は、顧客であるマイルス精工の「工場DXプロジェクト」の試行展開フェーズで、DXに協力的な部署に新しい業務やシステムを先行導入し、実現性の検証を進めている。いろいろと想定外のことが起きたが、システムや業務運用を変更してなんとか実現性の見通しが立った。2カ月後からはいよいよ全ての部署に新しい業務やシステムを導入する全体展開フェーズに着手する。その報告と相談のため、社内で名の通った超上流工程のエキスパートである先輩SEの工藤を訪ねた。

「試行展開を実施し、新しい業務やシステムの実現性が検証できそうです」

「そうか!特に問題はなかったかな」

「いろいろありましたが、なんとか乗れ切れそうです」

「よく頑張ったな!いよいよ大詰めだ」

 工藤がねぎらいの言葉をかけた。

「はい。全体展開フェーズでの業務部門への動機付けは、プロジェクトリーダーや検討メンバーに任せておけばいいのでしょうか」

「業務部門の反応はどうなの」

「新しい仕組みの導入に抵抗の強いメンバーもいると聞いています…」

 村山が不安そうな表情で答えた。

「そうか。それなら…定着化施策を考えたほうがいいな」

 工藤が一瞬、間を置いて答えた。

「定着化施策ってなんですか」

「詳しく説明しよう」