全4637文字
PR

多くの企業が注目するデジタルトランスフォーメーション(DX)。成果を上げる企業が登場する一方で、うまくいかない企業も多い。本連載ではDXで業務改革を成功させる考え方、進め方を解説する。

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「デジタル変革」「デジタル化」というキーワードが注目を集めています。いずれも同じ内容を表す言葉ですが、何を意味するのでしょうか。

 経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社内のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること」と定義しています。

 要約すると「企業が競争優位を確立するために、データとデジタル技術を活用して、新しい事業の創造や現行業務の改革に取り組むこと」です。

 この定義から分かるように、DXの取り組みには大きく2つのタイプがあります。1つはデジタル技術を使って新しいサービスを立ち上げたり新しい市場に参入したりする「新事業創造型DX」。もう1つは既存事業の生産性を向上したり新たな付加価値を創出したりするために現行業務を改革する「業務改革型DX」です。

 両者では考え方、進め方が大きく異なります。本連載では比較的取り組みやすい「業務改革型DX」に絞って、PoC(概念検証)にとどまらず確実に成果を出す考え方、進め方を解説します。

 まだ多くのITエンジニアはDXの経験が乏しいため、どう進めてよいのか戸惑っているケースが散見されます。DXを担当することになった中堅SE、村山さんの架空ストーリーを交えて学んでいきましょう。登場人物や企業は全て架空のものです。

 2020年2月、日経ITソリューションズのSEである村山は顧客企業のマイルス精工に出向いた。IT部の松本部長に呼ばれたからだ。会議室に入ると、松本部長が用件を切り出した。

「当社で、工場を対象にDXプロジェクトを立ち上げることになった。4月に要件定義を始めるので、検討を手伝ってほしいんだ」

 松本部長が穏やかな表情で言った。

「DXプロジェクトですか…」

 村山は内心穏やかではなかった。DXを担当した経験はなく、言葉を知っている程度だったからだ。動揺を見せないよう、松本部長からプロジェクトの目的や対象範囲、制約条件を一通り確認した。

 マイルス精工は、X線撮影装置、超音波診断装置などの医療機器を製造・販売する、売上高2000億円、従業員3000人の精密機器メーカーだ。IT部には40人が在籍する。松本部長は経理部出身で、6年前にIT部に異動し3年前に部長に就任した。将来の役員と見られている。

 村山は5年前からマイルス精工を担当しており、松本部長に評価されていた。過去の誠実な仕事ぶりを見込まれて、DXプロジェクトを手伝ってほしいと依頼されたのだ。しかし自信の無い村山は、持ち帰って検討すると伝えそそくさとマイルス精工を後にした。

「まずいな…あの人に相談しよう」

 村山が頼ったのは、日経ITソリューションズで超上流工程のエキスパートとして名の通っている先輩SEの工藤だ。工藤は20年以上にわたり数多くの超上流工程案件を担当し、そのノウハウを他のSEに伝えるべく手法の開発や社内研修にも力を入れていた。

 村山は5年前に社内研修で工藤の講義を受けてから親しくなり、たまに相談に持ってもらう間柄だ。マイルス精工の以前の案件でもアドバイスをもらっている。今回も電話をすると、快く相談に乗ってくれるという。

 翌日2人は会議室で会った。村山が経緯を伝えると、工藤は笑顔になった。

「おめでとう!DXは多くの企業が注目している取り組みだ。うちの部にも最近、支援依頼が多いよ」

「ですが、正直言ってDXの知識がほとんどなくて…」

 不安な表情を見せる村山に工藤は穏やかな表情で言った。

「それじゃあ、まずDXが何をすることかを説明しよう」

この記事は有料会員限定です

「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料