全2028文字
PR

 2022年のデジタル庁は、霞が関の各省庁と自治体と連携してデジタル改革をけん引できるか否か、試される年になる。大きな焦点が、各省庁の既存の法令などをデジタル視点で精査しまとめる規制一括見直しプラン策定と、本格化する自治体システム標準化である。

各省庁巻き込み規制一括見直し

 デジタル庁が事務局を担う、政府のデジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)は2022年春に、規制一括見直しの計画を取りまとめる。デジタルに沿った制度設計に見合わない規制を一気に取り払い、デジタル改革を加速するのが狙いだ。

 法制度の中には、デジタル時代にそぐわない「目視」や「対面」といったルールが多くある。そこで、インフラなどの保安規制や定期検査、建設や製造現場での「目視」や「対面」規制が一気に見直されそうだ。

 規制一括見直しは、法制度をつくる霞が関のデジタル改革の試金石となる。「デジタル庁で今一番の目玉はデジタル臨調」と石倉洋子デジタル監は語る。「デジタル改革を進めるうえで、制度があるからできないことが出てくる。デジタル臨調でそれを変えるのは大きな意味がある」(石倉デジタル監)。

 岸田文雄首相肝煎りで2021年11月に立ち上げたデジタル臨調の狙いは、デジタルの視点から規制改革と行政改革を一括して進め、国や地方自治体の制度を含めた構造改革を推進することだ。副会長となった牧島かれんデジタル相は行政改革と規制改革の担当大臣も併任するため、手腕が問われる。

 2022年1月にはデジタル臨調で法制度の精査などの実務を担う事務局が本格的に稼働する。事務局長を務める小林史明デジタル副大臣は「今の日本のスピードではデジタル化が進む中での構造変化に間に合わない。(デジタル臨調では)スピードを重視し、一気に加速することにこだわる」と意気込む。デジタル庁が推進する社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向け、制度面の見直しを一足飛びで進める。

 デジタル臨調はまず既存の法令や通知などを精査し、2021年末に策定した改革の共通指針「デジタル原則」に沿っているかどうかを洗い出す。その中から、一括見直し計画の対象を絞り込む。さらに、デジタル原則に実効性を持たせるため、新たな立法などがデジタル原則に適合するかどうか監視監督する「デジタル法制局」の設置を検討している。規制一括見直し計画や、デジタル原則に基づいた法制度の策定や運用が、骨抜きにならずに各省庁を巻き込んで実行に移せるかどうかが2022年の課題となる。

図 デジタル臨時行政調査会の取り組み
図 デジタル臨時行政調査会の取り組み
「デジタル原則」に基づいて規制・制度を見直す体制を構築(画像提供:内閣官房ホームページ(左上)、松野博一事務所(左下))
[画像のクリックで拡大表示]