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 プログラムのソースコードを極力記述せずにシステムを開発する「ローコード/ノーコード開発」(以下ローコード開発)が市民権を得た。2022年、日本企業の半数以上がローコード開発を手掛けるようになり、一部企業は基幹系にも適用する。開発の「民主化」が進む一方で「シャドーIT」や「野良アプリ」が増え、統制が取れない状況も生まれる。

 ローコード開発の動向に詳しいガートナージャパンのリサーチ&アドバイザリ部門アプリケーション・アーキテクチャ、プラットフォーム、インテグレーション担当シニアディレクターの飯島公彦アナリストは「ローコード開発ツールありきではなく、自社がどういったアプリケーションをつくりたいのかを定め、そのアーキテクチャーをきちんと設計することがまず必要だ」と指摘する。ローコード開発を、開発を効率化するテクノロジーの1つとして捉えることが、本当の意味での活用につながるという。

日本企業も導入に前向き

 米ガートナーは2024年までに世界のアプリケーションの65%以上がローコード開発基盤で構築されると予測しており、予測通りに日本企業でもローコード開発の導入が進んでいる。IDC Japanが2021年11月に発表した国内企業を対象とした調査では、ローコード/ノーコードプラットフォームを導入している企業は37.7%、導入に向けて実装/検証をしている企業は12.8%、導入する計画のある企業は8.2%だった。

図 国内企業におけるローコード/ノーコードプラットフォームの導入状況
図 国内企業におけるローコード/ノーコードプラットフォームの導入状況
2021年時点で約4割が導入(出所:IDC Japanの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 この調査を踏まえると2022年にローコード開発を手掛ける企業が過半となることは確実だろう。むしろ新型コロナ禍の反転攻勢やDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて企業が開発スピードをより高めようとしていることから、IT人材不足と相まって、導入ペースはガートナーの予想を上回る可能性もある。

 既に多くの日本企業がローコード開発を成功させている。日清食品ホールディングスはサイボウズの「kintone」や米マイクロソフトの「Power Platform」を使って決裁書や稟議(りんぎ)書などのデジタル化に取り組み、書類の承認期間を4分の1に縮めた。

 小林製薬はWebシステムの開発に米アウトシステムズの「OutSystems」を、りそなホールディングスは営業店システムの開発にウルグアイ・ジェネクサスの「GeneXus」をそれぞれ採用し、どちらも開発期間を従来の半分以下にした。日本航空(JAL)やJR東日本もローコード開発を導入している。

 導入企業はまず部門システムをアジャイル開発手法と組み合わせてローコードで開発するケースが多い。短期間で効率的に開発でき、ユーザーの要望に応じて機能もアップデートしやすいため、導入効果を享受できる。

 半面、統合開発環境(IDE)を使って手作業でプログラミングしながらウオーターフォール型で開発するという従来手法と比べると、仕様や設計のドキュメントを必ずしも残していないケースもあり、システムが将来的にブラックボックス化する危険をはらむ。2022年はローコード開発ブーム初期につくったシステムが担当者の異動や退職で維持できない状態となり、つくり直すことになる企業もありそうだ。

 ローコード開発は利用部門の担当者にアプリケーション開発を開放する力がある。ただIT部門があずかり知らぬアプリケーションが林立し、いつの間にかシャドーITや野良アプリだらけになる恐れもある。情報漏洩やシステム障害、内部不正などの温床にもなりかねない。IT部門は利用部門が開発できるメリットをアピールして前者の効率を高めつつも、アプリケーションを一元管理する仕組みや開発基準を浸透させるといったガバナンスを利かせることが欠かせないだろう。