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 2021年は様々な「新型コロナ対策AI」が登場する。感染シミュレーションや接近を防ぐ「密」回避、治療薬候補の化合物の探索などの分野へのAI(人工知能)活用が急速に進む。

 一例として感染者数予測AIを紹介しよう。大阪大学の産業科学研究所産業科学AIセンターの教授である桜井保志センター長は、時系列の非線形の微分方程式に基づいたアルゴリズムである「リアルタイムAI技術」の研究を新型コロナの感染者数予測に応用している。ベクトル解析をテンソル場に対して拡張する「テンソル解析」の手法を使い、各国の新規感染者数や死亡者数、重症患者数の時系列ビッグデータをもとに重要な特徴や潜在的傾向を抽出し、将来の感染者数を予測する。

図 大阪大学の産業科学研究所産業科学AIセンターが開発した「リアルタイムAI技術」
図 大阪大学の産業科学研究所産業科学AIセンターが開発した「リアルタイムAI技術」
深層学習に比べ10万倍の速度と10倍の精度に
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 この技術は「深層学習に比べると10万倍の速度かつ10倍の精度で感染者数を予測できる」と桜井センター長は話す。リアルタイムAI技術では、新規感染者数などの更新データを入力すれば、即時で予測モデルもアップデートする。緊急事態宣言といった施策やウイルスの変異など状況の変化に即時に対応できるという。

 従来の手法では、例えば4カ月分の教師データがたまってから学習モデルを作成するなど、多くのデータや学習時間が必要だった。「新型コロナのような未曽有の事態にはスピード感が求められる」(桜井センター長)。

他国の感染者数も教師データに

 教師データには、日本だけではなく米国やフランスなど世界各国のデータを使用する。世界各国もしくは日本国内の都道府県や市町村など複数の地域の新規感染者数の変動について、共通する時系列パターンと国・地域に特有の個別パターンを特徴として抽出して、複数の予測モデルからなる「モデルデータベース」を作成する。

 続いて、各国の感染者数に関する数時間もしくは数日の直近のデータをモデル検索・予測モジュールに入力すると、モデル検索・予測モジュールが膨大なモデルを持つモデルデータベースと照合し、瞬時に適切なモデルを選択。短期もしくは長期の感染者数予測を出力する。現在は7日後までの1日ごとに予測値を出すことが可能という。

 他国の感染者数推移も教師データに加えることで、例えば日本国内の「第3波」の予測をする際に、イタリアやフランスのモデルが使えるパターンなどもある。「様々な国や時期のモデルが、別の国や時期の予測に役立つ」(桜井センター長)。入力データをもとにAIが自動で適切なモデルを見つける、もしくはモデルがなければ新たなモデルを生成し、予測ができるという。

 米グーグルも2020年11月に、厚生労働省のオープンデータなどを使った「COVID-19感染予測(日本版)」の提供を始めた。今後28日間に予測される新型コロナウイルス感染症の死亡者数や陽性者数などを都道府県別に表示する。AIの予測結果に基づいて国や自治体が政策を決定する。そんな未来も遠くなさそうだ。