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 医師と患者にとってオンライン診療が身近になる──。2021年はその基盤整備が進む年となりそうだ。オンライン診療の初診に関する新しい実施ルールが定まり、オンライン診療を適用できる患者が増える可能性がある。2022年以降の診療報酬改定に向けてオンライン診療の有用性を示す症例の蓄積が進む他、遠隔診断を支援するIT製品・サービスの開発が進む。

 オンライン診療は医師がビデオ通話を利用して、自宅にいる患者の診察などを実施することだ。患者は通院の負担を軽減できたり、待ち時間を減らせたりする。

図 将来の「医師へのかかり方」
図 将来の「医師へのかかり方」
新型コロナで医療のデジタル化が3年前倒しに
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 医師と患者が対面診療以外にもオンライン診療という新しい選択肢を持つことで、両者の結びつきが強まると期待されている。通常、患者の来院が途切れると、治療が途中で止まってしまうことがほとんどだ。患者にとって受診の負荷が軽いオンライン診療を有効に活用すれば、患者の治療の離脱防止にもつながると考えられている。

 現状オンライン診療は対面診療と比較して診断できる内容に限界がある。それについて医師でデジタルハリウッド大学大学院客員教授の加藤浩晃氏は、「技術が発展すれば将来は、自宅に置いたIoT(インターネット・オブ・シングズ)の医療機器を活用し、医師が遠隔から診断できるようになるだろう」と展望する。

 技術の実用化に乗り出した企業もある。ヘカバイオデジタルヘルスは聴診器や体温計、血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを搭載した遠隔診断補助用の小型医療機器について日本での承認取得を目指している。

新型コロナで認知度向上

 オンライン診療が注目を集めるようになったのは新型コロナウイルス感染症の拡大がきっかけだ。来院者の間で感染が広がるリスクを抑えるため、初診の患者であっても医師がオンライン診療で診察や薬の処方ができる特例措置が2020年4月に施行された。

 特例措置がきっかけとなり、医師と患者両者のオンライン診療の認知度が向上。オンライン診療を実施する医療機関の数が増えている。厚生労働省の公表データによると、特例措置下でオンライン診療や電話による診療を実施できると登録したのは2020年10月末時点で1万6587カ所、全国の医療機関の約15%にあたる。

 新しいことが進みにくい医療業界にとっては、「およそ3年分の変化が前倒しで起きている」と加藤氏は指摘する。

 新型コロナの特例措置が施行される以前は、オンライン診療はほとんど普及していなかった。オンライン診療の実施条件などが厳しく、医療機関が採用しにくかった。さらに、対面診療のほうが医療機関の得る診療報酬が多い。医療機関がオンライン診療を導入するインセンティブが働きにくいのが現状である。今後オンライン診療が普及するには、医療機関を動かすような診療報酬の議論が欠かせない。2021年の動きに要注目だ。