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 第5世代移動通信システム(5G)の日本での商用サービスは2020年春に始まったばかり。だが世界を見渡せば、その次の「第6世代移動通信システム(6G)」の研究開発が早くも活発になっている。通信技術はほぼ10年ごとに世代交代する。2021年、6Gの2030年代の実用化に向けた産・官・学を挙げての技術競争が本格化する。

 通信サービスはもともと、人と人のコミュニケーションを支える役割を担ってきた。それが現在の5Gでは、工場の自動化や遠隔医療、自動運転など産業を支える社会基盤としての性格が強まった。そして6Gの時代。総務省が2020年6月に発表した「Beyond 5G推進戦略-6Gへのロードマップ-」によれば、現実世界とサイバー空間のデータのやり取りが飛躍的に増大する。それを支えるために、6Gには5Gを大幅に上回るスペックが求められている。

図 Beyond 5G(6G)に期待されている機能
図 Beyond 5G(6G)に期待されている機能
5Gの機能強化に加え新たな価値を作り出すための機能も付加
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 例えば、通信速度は5Gの10倍が目標だ。一定のエリアで基地局に同時に接続できる機器の数についても5Gの10倍を目指す。一方、データを送受信する際の遅延時間については、5Gの10分の1に短縮する。

自律性や拡張性も備える

 こうした5Gからの連続的な進化に加えて、社会価値の創造につながるような新たな機能も要求されている。総務省が挙げているのは「自律性」「拡張性」「超安全・信頼性」「超低消費電力」の4点だ。

 自律性とは、AI(人工知能)を活用して様々な機器が自律的に連携し、有線か無線かを意識せずに利用者のニーズに合わせた最適なネットワークを自律的に構築するというものだ。拡張性については衛星通信や成層圏通信も活用し、人のいない空や海、宇宙なども含めたあらゆる場所で通信できるサービスを想定している。

 超安全・信頼性に関しては、利用者が意識しなくてもセキュリティーやプライバシーが常に確保され、災害や障害が発生しても瞬時に復旧して継続的にサービスを利用できる。超低消費電力では現在の100分の1の電力消費量を目指している。

 通信技術の飛躍的な進化には膨大な投資と時間が必要だ。既に欧州や中国、韓国では2018年から19年にかけて6Gの研究開発プロジェクトが動きだしている。日本でもNTTが2019年から6Gを見据えたインフラ構想「IOWN(アイオン)」を掲げて開発に名乗りを挙げた。ソニーや米インテルと共同で設立した業界団体「IOWN Global Forum」で2020年から仕様策定に向けた議論を開始。2021年にはいよいよレファレンス(参照)方式をまとめ、本格的な技術開発段階に進む計画だ。

 6Gで目指しているような超高速・大容量の通信サービスの実現には、消費電力量を削減する技術のブレークスルーが不可欠だ。NTTはそこに目をつけた。IOWN構想のポイントはネットワークから端末に至るまで、あらゆる情報を光信号のまま一気通貫でやり取りする点だ。情報処理のために途中で電気に変換し、また光に戻すといった工程を不要にして電力効率を大幅に高める。機器同士のみならず、チップ間やチップ内のコア間の配線や信号処理まで光化していくという。