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 2021年以降、従来よりもはるかにきびきび反応するゲームや映像配信、酔わずに没入できるVR(仮想現実)/AR(拡張現実)コンテンツなどが登場しそうだ。工場のスマート化なども一段と進む可能性がある。

 これら変化を支える一翼がMEC(Multi-access Edge Computing)だ。モバイルの視点から見たエッジコンピューティング技術で、端末に近い側(エッジ)にサーバーを分散配置して処理するアーキテクチャーを指す。クラウドで実行してきた処理を、端末に物理的に近いエッジ(携帯通信事業者にとっては基地局など)で実行することで負荷の分散や処理遅延の短縮などが見込める。MEC活用が期待される分野として、画像分析や位置情報、IoT(インターネット・オブ・シングズ)やVR/AR、自動運転などがある。

図 MEC(Multi-access Edge Computing)の領域
図 MEC(Multi-access Edge Computing)の領域
MEC活用でデータ処理速度を向上(出所:情報通信総合研究所「InfoCom T&S World Trend Report」20年3月号の資料を基に日経コンピュータが作成)
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5Gがエッジに起こす2つの変化

 MECへ注目が集まるのは第5世代移動通信システム(5G)ならではのサービス実現に必要だからだ。情報通信総合研究所のICTリサーチ・コンサルティング部の左高大平主任研究員によると、5Gが起こす変化には2つのポイントがある。無線区間での端末の通信が高速化する点と、システム構成の仮想化でエッジ側に新機能を置ける可能性が広がる点だ。左高研究員は「(MEC環境に)どうコンピューティングリソースを配分してネットワークでつなぐか、どこでデータを処理し保存するか、事業者にとって工夫のしがいが出てくる」と指摘する。

 通信事業者は新サービスを打ち出し始めた。楽天モバイルは仮想化技術を使った5Gネットワークの構築・運用ノウハウを外販する。NTTドコモは自社網内に低遅延などMECの特徴を持つクラウドを構築、商用提供する。

 一方クラウド事業者が携帯通信事業者と組み、5Gの網内にエッジサーバーを置いてサービスを提供する例もある。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は米ベライゾン・コミュニケーションズと2019年に提携し、ベライゾンの網内で展開するコンピューティングとストレージのサービス「AWS Wavelength」を開始、米国8都市で対応する。KDDIとも組み2020年12月、東京で同サービスを開始した。

 エッジ活用の課題はコストだ。だが非対面などの新常態へのニーズが、新サービスを呼び込む。