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 2021年には脳情報の活用がより身近な物になる。脳と機械をつなぎ、脳の情報を読み取ったり、逆に脳に情報を送り込んだりする技術、BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)の発展がその背景にある。

 2020年8月には米テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が創業した米ニューラリンクが、頭蓋骨に埋め込むタイプのBMI「LINK」を披露した。LINKは電池駆動し装着者にほとんど違和感を与えず脳情報を読み取れるという。発表会では、LINKを埋め込まれながらも元気に動くブタの脳情報をモニターに映し出すデモンストレーションを実施。人間にLINKを埋め込み、念じるだけで車やテレビゲームを操作することを目指す。

 米フェイスブックもBMIに野心を見せる。2019年9月にBMIを開発するスタートアップの米コントロールラボを買収している。コントロールラボが開発するBMIはリストバンド型で、フェイスブックはこれを利用して画面に触れずSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を操作できるようにする思惑だ。

 BMIが読み取る脳情報は主に脳波(脳の電気活動)だ。BMIに詳しいNTTデータ経営研究所 情報未来イノベーション本部 ニューロイノベーションユニットの茨木拓也アソシエイトパートナーは「人間が見たり感じたりしたものに応じて、脳波は変わる。BMIはそれを計測することで、言葉や感情を読み取れる」と話す。脳の血流からも多くの情報を読み取れるが、高精度に読み取るには大型で高価な装置を用いる「fMRI」が必要。そのためBMIでは脳波の計測が主流だ。

抵抗感の少ない非侵襲型

 脳情報を読み取るBMIは大きく「侵襲型」と「非侵襲型」に分けられる。侵襲型は外科手術を通して頭蓋へ針やシート型の電極を埋め込む。それに対して非侵襲型は外科手術を伴わず、頭皮上の電極や頭にかぶるキャップのような機器で脳波を測定する。茨木アソシエイトパートナーは「電極が脳に近くなるほど高解像度かつリアルタイムな情報が取れる」と侵襲型BMIのメリットを話す。

 取れる情報量が増えると、脳情報を読み取ってできることも増える。だが電極を刺すことによる脳へのダメージの懸念や利用者の外科手術に対する不安などが課題としてある。それに対して非侵襲型は、情報量は侵襲型に及ばないものの、侵襲型のようなリスクが無いことがメリットとなる。ニューラリンクのLINKは侵襲型、コントロールラボのBMIは非侵襲型にあたる。

 日本でも非侵襲型デバイスに動きがありそうだ。2020年11月、スタートアップのヴィースタイルはNTTデータ経営研究所と共同でイヤホン型脳波計「VIE ZONE」に関する研究成果を発表した。VIE ZONEで取得した耳が発する信号を基に、「EAR2BRAIN」という技術を用いて頭皮上の脳波を推定する。イヤホンのような使い勝手でありながら脳情報を取得できるという。今後は脳波を使った音楽機器の操作や、脳の状態に合わせた音楽の再生による感情調整トレーニングの実現などを目指す。

イヤホン型脳波計の「VIE ZONE(ヴィーゾーン)」(写真:VIE STYLE)
イヤホン型脳波計の「VIE ZONE(ヴィーゾーン)」(写真:VIE STYLE)
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 肉体の一部だが未解明のことが多い脳は「人類最後のフロンティア」と呼ばれる。BMIが発達し、脳情報を気軽に活用できるようになることで、脳と人の距離が縮まりそうだ。