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 ブロックチェーン技術を活用した最初の商用サービスとも言えるビットコインが稼働して10年。以降、インターネット以来の革命と期待されつつも大規模商用サービスの普及に結びつかなかった本命技術が2020年についに花開く。

 有力候補が新しい資金調達手法の「STO(セキュリティー・トークン・オファリング)」である。トークンとはブロックチェーン上で生成した独自コインを指す。単純な通貨としてではなく、様々な機能や価値をひも付けられるのが特徴だ。STOの場合、トークンは「デジタル証券」という位置づけだ。

図 STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の流れ
図 STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の流れ
投資の小口化が可能に
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 一般に株式証券や発行には当事者である発行企業だけでなく、証券会社や法律事務所など複数のステークホルダーが関わる。デジタル証券でも同じで、この複数の関係者の情報共有をブロックチェーンが担う格好だ。

 ブロックチェーンはもともと「スマートコントラクト」と呼ぶ、一定のルールに基づいて取引処理を自動化する機能を備える。STOはスマートコントラクトを使って、証券の取引や配当を自動執行する。これにより発行コストを減らし、従来は証券化の対象となりにくかった小規模資産やプロジェクトを金融商品として販売する道を開くわけだ。

 代表例が不動産の証券化である。世の中には既に、複数の不動産を組み込んで証券化するREIT(不動産投資信託)が存在する。これに対してSTOであれば、REITが組み込んできた個別の不動産をそれぞれ証券化、トークン化し、透明性の高い形で投資家に提供できる。ESG投資の盛り上がりを受け、再生エネルギー関連のプロジェクトの証券化も有望分野という。

 ブロックチェーンを使ったサービスに詳しいデロイト トーマツ コンサルティングの園部光宏シニアマネジャーは「(ブロックチェーンの)キラーコンテンツになりえる」と期待を寄せる。

規制強化で逆に扱いやすく

 金融法制もSTOの盛り上がりを後押しする。2020年4月にもセキュリティートークンの扱いを規定した改正金融商品取引法が施行されるからだ。

 改正法では有価証券の性格を持つセキュリティートークンを「電子記録移転権利」と定義する。原則、国債や株式といった「第一項有価証券」として扱い、業規制や開示規制を課していく。

 セキュリティートークンが正式に金商法の枠組みに入ったことは規制強化に当たる。ただ、これまで曖昧だった法的な位置づけが明確になり、大手金融機関にとっては逆に事業として扱いやすくなるという。「改正法の施行後、すぐにでも新しい金融商品を出したいとする金融機関もある」(関係者)。

 事実、金融業界の期待は高く、2019年10月1日にはSBI証券が主導する業界団体、日本STO協会が発足した。野村証券や大和証券など6社が名を連ね、自主規制団体として金融庁の認定取得を目指している。

 個別の動きでは野村ホールディングスは野村総合研究所(NRI)と合弁会社を設立し、セキュリティートークンの発行・流通基盤のシステム構築に着手している。三菱UFJフィナンシャル・グループも三菱UFJ信託銀行を中心に、同様の基盤開発に乗り出した。

 STOはスポーツチームの資金調達など柔軟な用途に使える。様々なアイデアが一気に形になり世の中を面白くしてくれそうだ。