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 2019年10月の台風19号で大きな被害が生じた7水系で、国と自治体が連携して5~10年間の緊急治水対策に取り組む。事業の総額は4213億円を見込む(図1)。

図1■ 5水系では2024年度に事業完了
水系 流域の都道府県 予算 事業完了予定
吉田川 宮城県 267億円 2024年度
阿武隈川 宮城県、福島県 1354億円 2028年度
信濃川 新潟県、長野県 1227億円 2027年度
久慈川 茨城県 334億円 2024年度
那珂川 栃木県、茨城県 521億円 2024年度
入間川 埼玉県 318億円 2024年度
多摩川 東京都、神奈川県 191億円 2024年度
緊急治水対策プロジェクトの概要。国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成

 河道掘削や堤防整備を進める他、遊水地や霞堤を活用して浸水被害を防ぐ。併せて、浸水リスクに応じた居住誘導や土地利用などのソフト対策も実施する。

 台風19号では、国が管理する7河川12カ所で堤防が決壊し、多摩川など都心部に近接する河川でも氾濫が生じた。異例の被害を受けて国土交通省は20年1月31日、吉田川、阿武隈川、信濃川、久慈川、那珂川、入間川、多摩川の7水系それぞれの「緊急治水対策プロジェクト」を発表した。

 「流域全体で洪水を調節する施策や、それに伴う住まい方の工夫を盛り込んだ」と国交省治水課の信田智企画専門官は対策の特徴を説明する。河道内だけでの対策には限界が出てきたからだという。

 近年は想定を超える雨が降り、河道の拡幅や堤防の整備といった対策では越水や決壊を防ぎきれなくなってきた。河川管理者と流域の自治体が連携し、浸水被害や逃げ遅れを減らす取り組みを強化する。

霞堤やハイブリッド型遊水地を新設

 流域での対策では、川からあふれた水を一時的にとどめる遊水機能や貯留機能を高める。

 例えば、国交省関東地方整備局や茨城県、栃木県などが5年間で取り組む那珂川と久慈川の治水対策プロジェクトでは、計4カ所で「霞提」を新設する(図2)。霞堤は、堤体に開口部を設けた不連続な堤防だ。開口部では、下流側の堤防が上流側の堤防の外側に延び、堤防が二重になっている。

図2■ 開口部から逆流する「霞堤」
図2■ 開口部から逆流する「霞堤」
洪水のピーク時における川の流れ(資料:国土交通省)
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 洪水時には、開口部から水が逆流して流下の勢いを弱めたり、二重になった堤防の間で水をためたりする。氾濫した後も、開口部から川に水を戻せる。川が氾濫しやすく住宅がない地区などに霞堤を造り、浸水被害の拡大を防ぐ。

 那珂川ではさらに、内水氾濫に対応した「ハイブリッド型」の遊水地の新設を検討している。遊水地は、川に接する土地の一部を堤防で囲み、その中を掘り下げて造る治水施設だ。通常は河川側にだけ排水のための水門を設置する。ハイブリッド型では、市街地側の堤防にも水門を造り、内水氾濫の水も遊水地にためられるようにする。

 住宅の浸水を防ぐ対策も進める。浸水の危険性が高い区域では住宅の移転やかさ上げ、土地利用の制限などに着手する。自治体と協力して住民の理解を得る。