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 中部横断自動車道の醍醐山トンネル(山梨県身延町)で覆工コンクリートの打ち継ぎ目144カ所に浮きが見つかった問題で、台形の断面形状が弱点になった可能性があると分かった。国土交通省が2020年4月3日に検証結果をまとめた。

 原因の特定には至らなかったものの、打ち継ぎ目の周辺で許容値を超える引っ張り応力が生じていた。打ち継ぎ目の形状の選定は施工者に任せているが、応力計算までは義務付けていない。加えて、打ち継ぎ目を台形とするのは一般的な工法だ。完成検査などで所定の品質を満たしていたので、施工ミスとは判断しなかった。

 醍醐山トンネルは、19年3月に開通した下部温泉早川インターチェンジ(IC)─六郷IC間にある延長2.4kmの山岳トンネルだ。同年9月に起こったコンクリート片の落下を受けて緊急点検したところ、覆工コンクリートの打ち継ぎ目246カ所のうち約6割で浮きが見つかった(写真12)。

写真1■ 打ち継ぎ目に大量の浮きが見つかった醍醐山トンネル。写真は、緊急点検の様子(写真:国土交通省甲府河川国道事務所)
写真1■ 打ち継ぎ目に大量の浮きが見つかった醍醐山トンネル。写真は、緊急点検の様子(写真:国土交通省甲府河川国道事務所)
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写真2■ 剥落したコンクリート片。この剥落が、大量の浮きの発見につながった(写真:国土交通省甲府河川国道事務所)
写真2■ 剥落したコンクリート片。この剥落が、大量の浮きの発見につながった(写真:国土交通省甲府河川国道事務所)
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 トンネルを管理する国交省甲府河川国道事務所は有識者委員会を設置し、施工と天候などの外部環境、地山の変状などの外力、初回点検の4つの観点から原因を調べた。

 その結果、施工と初回点検がひび割れの発生に影響した可能性があると判明。天候などの外部環境と地山の変状などの外力では問題が見つからなかった。

 甲府河川国道事務所の松澤尚利副所長は「完成検査に合格しており最低限の品質は確保できていた」と話し、施工ミスとは認めなかった。その一方で、「丁寧さが欠けていた可能性がある」と指摘する。

 施工を担当した戸田建設などへのヒアリングでは、型枠のオーバーラップ部分で押し付け力が強くなったことや、コンクリートの締め固めや養生で施工後の乾燥収縮への対策が不十分だったことで、ひび割れが生じた可能性が判明した(図12)。

図1■ 覆工型枠の押し付けでひび割れの可能性
図1■ 覆工型枠の押し付けでひび割れの可能性
国土交通省甲府河川国道事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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図2■ 乾燥収縮でひび割れ発生か
図2■ 乾燥収縮でひび割れ発生か
国土交通省甲府河川国道事務所の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 さらに、現場の条件に合わせて打ち継ぎ目の周辺の応力を計算した結果、土木学会の標準示方書が示す許容引っ張り強度を超える応力が生じると分かった。打ち継ぎ目の断面形状が台形だったために、頂辺部の面に応力が加わりやすく、構造上の弱点となった可能性がある。

 打ち継ぎ目の形状は一般に、下請け会社が機材などに合わせて台形や三角形から選ぶ。設計や施工計画などで詳細に指定する例は少ないという。松澤副所長は「打ち継ぎ目が三角形の場合は、面ではなく頂点に応力がかかる。施工条件によってはひび割れを防ぎやすくなる」と話す。