政府は、コンクリート塊など産業廃棄物が混ざった建設発生土(残土)の盛り土への使用を防ぐため、建設現場への監視を強めるとともに、建設会社への指導や罰則を強化する。建設会社に「廃棄物混じり土」の適切な処理を徹底させるため、電子マニフェスト(管理票)の利用を促す。
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流の現場では、崩落した盛り土の中から木片やコンクリート片、金属片、ごみ袋など様々な廃棄物が見つかっている(資料1)。土石流を受けて設置した政府の検討会は21年12月、新たな法制度の整備などと併せ、廃棄物の盛り土への混入を防ぐ対策を提言した。
国土交通省は検討会の提言を踏まえ、廃棄物混じり土の不適切な処理で廃棄物処理法違反に問われた建設会社などへの罰則を強化する。本社の役員や営業所の代表者が懲役刑を受けた場合、営業停止を命じる期間を現行の7日以上から15日以上に倍増。一般社員を含む役職員が罰金刑などを受けた場合、同期間を3日以上から7日以上に引き上げる。
国交省は建設業法に基づき、建設会社の不正行為に対する監督処分基準を定めている。国交省は今回、この基準を改正する。従来の労働基準法違反との併記を改め、廃棄物処理法違反として新たな項目を立て、労基法違反よりも重い行政処分とする。
国交省は22年4月15日、監督処分基準の改正案を公表し、パブリックコメント(意見公募)を開始した。公募で寄せられた意見を踏まえ、新たな基準を決定した上で、5月末までの公布・施行を目指す。
電子マニフェストの利用を促進
政府は同様に、検討会の提言に基づき建設会社などへの監督・指導を強めていく方針だ。19年度に不法投棄が判明した産業廃棄物のうち、投棄件数の8割以上、投棄量の半分以上に建設系の企業が関わっていた。
国の労働基準監督署が自治体の建設リサイクル担当部局や環境部局と連携してパトロールをする際、廃棄物混じり土の分別状況などを新たに確認対象に加え、法令違反の疑いがある場合は関係部局に直ちに通報する。自治体の建築確認部局とも連携して、問題がありそうな現場を割り出し、重点的に巡視。必要に応じて、抜き打ち確認も行う。
検討会は他にも、マニフェスト管理の強化を提言している。
建設工事では、元請け会社が排出事業者に位置付けられる。下請け会社が元請け会社の委託を受けて廃棄物を運搬する場合、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する必要がある。不法投棄された産業廃棄物の実行者別内訳では、この許可事業者による投棄量が最も多い。そこで、建設工事における電子マニフェストの利用を促す。
電子マニフェストとは、マニフェストの記載内容を電子データ化し、排出事業者と収集運搬事業者、処分事業者の3者が情報処理センターを介したネットワーク上でやり取りする仕組みだ。自治体や排出事業者、処理事業者の事務を効率化できる他、不正処理の原因究明の迅速化やマニフェストの偽造防止を図れる。