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 国土交通省九州地方整備局は、鹿児島市吉野町にある国道10号沿いの崖地を、土地所有者に崩壊対策を命じることができる道路法上の「沿道区域」に指定した(写真1)。九州地整によると、直轄国道で沿道区域を指定したのは初めて。

写真1■ 沿道区域の指定箇所。赤丸で囲んだ場所に不安定な岩塊がある(写真:国土交通省九州地方整備局)
写真1■ 沿道区域の指定箇所。赤丸で囲んだ場所に不安定な岩塊がある(写真:国土交通省九州地方整備局)
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 民有地では周囲の安全確保に要する費用を土地所有者が負担するのが原則なので、対策が遅れがちだ。九州地整では、行政が対策費用を負担できる同制度を利用して落石リスクに先手を打った。

 九州地整鹿児島国道事務所が2021年7月30日に沿道区域を指定し、土地所有者に安全対策を講じるよう命じた。区域の長さは道路に沿って18mで、幅が10.2m。路面から約15mの高さに、不安定とみられる岩塊がある(写真2)。

写真2■ 岩塊には亀裂がみられ、今後急に不安定になる恐れがある(写真:国土交通省九州地方整備局)
写真2■ 岩塊には亀裂がみられ、今後急に不安定になる恐れがある(写真:国土交通省九州地方整備局)
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 岩塊の大きさは高さ約3m、幅約2m、奥行き約1m。崖地との境目に亀裂が確認されている。

 九州地整は、緊急対策が必要とは言えないが、今後の大雨や地震などで岩塊が落下する恐れがあると判断。崖の傾斜が急で、道路敷地内に防護柵を設置しても安全が確保できないため、土地所有者に対策を命じられる沿道区域の指定を決めた。

施工者や時期は今後協議

 沿道区域は道路の端から20m以内の範囲を指定できる。道路管理者は土地所有者に命じた安全対策について、必要に応じて費用を支払う。道路管理者が土地を所有者から買い上げるのに比べると、手間や費用が抑えられる。

 沿道区域の規定は1952年の道路法制定時から設けられていた。だが区域の土地所有者が講じた安全対策の費用に関して、補償を明文化していなかった。そのため道路管理者が土地所有者の私権に配慮するなどして、運用する例が出てこなかった。

 2018年の道路法改正により、沿道区域制度に損失補償規定が新設された。補償を前提として対策を命令できるため、道路管理者が沿道区域を指定しやすくなった。

 九州地整は岩塊の落下防止対策として、格子状にしたワイヤロープで崖地に固定する工事を想定している。対策工事の施工者や時期、補償金額などを今後、土地所有者と協議して決めていく。