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 政府は、国内外から「奴隷制」とも批判される外国人技能実習制度を見直す。実習生を受け入れる企業側の人権侵害や法令違反が後を絶たないためだ。

 技能実習制度の見直しは、2022年7月29日に当時の古川禎久法相が表明した。古川法相は、「人づくりによる国際貢献という技能実習制度の目的と、人手不足を補う労働力として扱っているという実態が乖離(かいり)している」と指摘。関係閣僚会議の下に有識者会議を設置して、見直しの検討を始める考えを明らかにした。

 技能実習制度の見直しの背景には、一部の受け入れ企業で実習生に対する人権侵害が深刻化している問題がある。

 古川法相は22年1月25日の会見で、岡山市内の建設会社で働くベトナム人実習生が職場で約2年間にわたって暴行や暴言を受けていたとの報道を取り上げ、「実習生に対する暴行などの人権侵害行為は決してあってはならない」と発言。出入国在留管理庁(入管庁)に対応を指示した。

 入管庁は22年2月、この建設会社の技能実習計画の認定を取り消し、ホームページなどで公表した。さらに5月には、問題の建設会社を傘下に持つ岡山市内の団体に対し、監理団体の許可を取り消した。

 処分理由として、この団体が建設会社への監査を適切に実施せず、実習生からの相談にも適切に応じずに必要な措置を講じなかったことなどを挙げた。

 実習実施者への監督指導権限を持つ厚生労働省が22年7月27日に公表した資料によると、実習生に対する不適切な対応が目立つのは建設業だ。

失踪者の2人に1人が建設関係

 全国の労働局や労働基準監督署が21年に労働基準関係法令違反の疑いで監督指導をした建設関係の事業場は1528で、そのうち法令違反があった事業場は1228だった。

 主な内容は、割増賃金の支払い違反(403事業場)、安全基準違反(299事業場)、賃金の支払い違反(295事業場)だ。

 入管庁によると、21年に判明した実習生の失踪者は7167人。そのうち、建設関係は3838人で、全体の53.6%を占める(資料1)。入管庁が職種別のデータの公表を始めた18年以降、建設関係では失踪者数、構成比(全体に占める建設関係の割合)ともに過去最高となった。

資料1■ 建設関係の割合が過去最高
資料1■ 建設関係の割合が過去最高
技能実習生の失踪者の総数と、建設関係の失踪者数の推移。出入国在留管理庁の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響などもあり、建設関係の失踪者数には年によって増減がある。しかし、構成比は18年39.9%、19年40.8%、20年45.7%と一貫して上昇している。今や失踪者の2人に1人が建設関係だ。