2021年10月3日午後4時ごろ、和歌山市を流れる紀の川に架かる「六十谷(むそた)水管橋」が長さ約60mにわたって崩落した(写真1)。川の南側の浄水場から北側の配水池に送水する直径約90cmの管2本が破断。川の北側にある市内約6万世帯が断水した。市が道路橋で義務付けられているような「近接目視」で点検していなかったため、構造部材の腐食の進行や破断を見落とした可能性がある。
六十谷水管橋は、1975年に建設されたランガー補剛形式の7径間連続アーチ橋だ。北側から4番目の径間が突然、崩れた。国土交通省和歌山河川国道事務所の定点カメラが撮影した崩落時の映像によると、桁を兼ねる送水管の中央部と上部のアーチとの間が広がっている(写真2)。
市は2021年10月6日に専門家らと現地を調査。ドローンで上空から水管橋を撮影した。崩落箇所の北側に隣接する径間では、送水管とアーチを結ぶ18本の吊り材のうち、4本に腐食や破断が見つかった(写真3)。
吊り材は直径約14cm、厚さ4.5mmの鋼管だ。吊り材とアーチを斜めにつなぐ線材との接合部の上下などで、破断が確認された。送水管から破断箇所までの高さは約3.5mある。尾花正啓市長は10月6日に開いた調査結果の説明会で、「吊り材と線材の接合部など突起がある場所は鳥のふんや雨水、潮風の塩分などがたまり、腐食が進みやすいようだ」と説明した。
これらの破損がいつ生じたのかは分かっていない。市は落橋の原因も不明としている。一方で、20年12月に撮影されたグーグルマップのストリートビューでは、崩落した径間の吊り材でも既に複数の箇所が破断しているように見える。