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 桁の浮き上がりを抑えるPC鋼棒が破断して路面に約20cmの段差が生じた上関大橋(山口県上関町)で、県は2021年10月28日に本復旧工事に着手した。浮き上がった桁端部と橋台下の地盤をつないだグラウンドアンカーを緊張し、段差を解消する(図1写真1)。22年3月までに終える予定だ。

図1■ 桁端部を押し込んで段差を解消

[側面図]
[側面図]
上関大橋の本復旧工事の概要。グラウンドアンカーによってA2橋台側の桁端部を下に押し込んで再固定化。段差を解消して、中央ヒンジの応力を開放する。山口県の資料を基に日経コンストラクションが作成
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[中央ヒンジ部]
[中央ヒンジ部]
山口県の資料を基に日経コンストラクションが作成
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[A2橋台側桁端部]
[A2橋台側桁端部]
山口県の資料を基に日経コンストラクションが作成
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写真1■ 山口県の室津半島と長島を結ぶ上関大橋。右側が事故のあった室津側(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 山口県の室津半島と長島を結ぶ上関大橋。右側が事故のあった室津側(写真:日経コンストラクション)
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 県が設置した復旧検討会議(座長:麻生稔彦・山口大学教授)は、21年10月15日に公表した報告書で、桁端部と橋座をつなぐ鉛直PC鋼棒が腐食と引張応力の作用による「応力腐食割れ」で脆性(ぜいせい)破壊した可能性があると指摘。同じ構造形式の橋について、漏水を発見した際の対応など点検時の留意事項を提言した。

 上関大橋では、20年11月に突然桁端部が跳ね上がり、段差が生じた伸縮装置に車が衝突した。同橋は中央部がヒンジの「ドゥルックバンド」と呼ぶ構造形式を採用した長さ220mのプレストレスト・コンクリート(PC)橋だ。橋台上の桁端部には常に上向きの力がかかるので、鉛直PC鋼棒で浮き上がりを抑えている。そのPC鋼棒が腐食して破断し、事故が起こった。18本配置したPC鋼棒の全てが破断したとみられる。

 本復旧工事では、仮復旧で施工したグラウンドアンカーを再緊張する。県は21年3月、桁端部に直径62mm、長さ18mのグラウンドアンカーを4本打設。橋台下の安定地盤まで埋め込み、桁の浮き上がりが悪化しないよう仮固定した。今回は、復旧検討会議での調査などを踏まえてグラウンドアンカーに緊張力を導入し直し、桁の位置を事故前の状態に戻す。