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静岡県熱海市で起こった土石流災害の影響は、全国の盛り土問題へと広がった。東京外かく環状道路やリニア中央新幹線の事業では、先行きの不透明感が増している。2021年を10大ニュースで振り返る。

1 熱海土石流で盛り土規制が加速

2021年7月3日に熱海市で発生した土石流は、下流域の住宅をのみ込んだ(写真:竹林洋史・京都大学防災研究所准教授)
2021年7月3日に熱海市で発生した土石流は、下流域の住宅をのみ込んだ(写真:竹林洋史・京都大学防災研究所准教授)
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 2021年7月3日、静岡県熱海市で大規模な土石流が発生し、巻き込まれた26人が犠牲となる大惨事になった。崩壊の起点にあった違法な盛り土が被害を拡大させたとみられる。

 静岡県によると、逢初川流域の上流部にあった7万m3を超えると推定される盛り土のうち約5万4000m3が崩壊した。盛り土由来の土砂の量は、土石流の97%を占める。

 この現場では、神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)が06年9月に土地を取得。07年3月に、県土採取等規制条例に基づき、盛り土を造成する計画を市に提出した。盛り土の規模は、土量約3万6000m3、高さ15mだった。

 しかし、盛り土への産業廃棄物の混入などが判明し、この会社は県や市から再三にわたって行政指導を受けた。最終的な盛り土の量は約7万m3に膨れ上がり、高さは最大約50mに及んでいた。排水施設の設置といった適切な安全対策も施していなかったとみられる。

 条例に違反して施工された盛り土の判明を受けて、国は全国の民有地で盛り土の一斉点検を始めた。対象は、自治体への無許可・無届けの盛り土なども含む。21年9月末の時点で、盛り土の総点検の予定箇所数は全国で3万~4万に上る。

 水抜きなど災害防止に必要な措置を取っているかといった視点などで、点検を実施する。危険な盛り土を抽出して、土地所有者などに是正措置を求めていく。

 危険な盛り土の造成を防止する体制づくりなどを目指す議論も始まった。盛り土に関しては、全国で一律に規制する法律がない点が問題視されている。

 政府は21年9月に、「盛土による災害の防止に関する検討会」(座長:中井検裕・東京工業大学教授)を設置した。盛り土の総点検の結果を踏まえ、土地利用規制の見直しなどの対策をまとめる方針だ。