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 大成建設大成ロテックは、電動キックスケーターに太陽光発電で生成した電力を無線で供給する「グリーン充電ポート」の実用化に動き出した。バッテリーを交換したりケーブルでつないだりする必要がなく、キックスケーターを充電スポットに止めれば床から給電できる(写真1)。

写真1■ 電動キックスケーターを充電スポットに止めると自動で無線充電が始まる。右のキックスケーターにつながっているのは受電機器の模型(写真:大成建設)
写真1■ 電動キックスケーターを充電スポットに止めると自動で無線充電が始まる。右のキックスケーターにつながっているのは受電機器の模型(写真:大成建設)
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 2022年1月に、福岡地所(福岡市)が運営するマリノアシティ福岡の敷地内で実証実験を行った。電動キックスケーターのシェアサービスを手掛けるスタートアップ企業のmobby ride(モビーライド、福岡市)が提供する車両「mobby」を使った。

 充電方法には「ワイヤレス充電システム」を採用した。敷地内に設けたスポットに電動キックスケーターを止めれば、無線で充電が始まる。床には3層の薄型パネルを敷く。下から厚さ0.035mmの金属膜、同4mmの樹脂パネル、同0.035mmでテープ状の送電電極を積み重ねる。

 電動キックスケーターには、受電側の電極になる機器を後付けしている。送電側と受電側の電極間に発生する電界を利用して電力を供給する仕組みだ(図1)。電極間の距離が短いほど効率的に充電できる。送受電装置は、豊橋技術科学大学発のベンチャー企業であるパワーウェーブ(愛知県豊橋市)が設計した。

図1■ 電界を利用して電力を供給
図1■ 電界を利用して電力を供給
グリーン充電ポートの概略図。地面に敷設した太陽光パネルで発電した(資料:大成建設、大成ロテック)
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 供給する電力は太陽光発電で賄った。大成ロテックが開発した、ガラスや樹脂による保護材と太陽光パネルを一体化した「路面太陽光発電ユニット」を使用。昼間に発電した電気は蓄電池にためて使える。ワイヤレス充電システムと路面太陽光発電ユニットを組み合わせたのがグリーン充電ポートだ。

 大成建設はワイヤレス充電システムを25年度に商用化する目標を掲げる。実証実験で使用したパネルを建物内の床に敷いて、屋内で電動モビリティーを動かしながら充電する使い方を視野に入れる。将来は、電気自動車を走行中に無線で充電する道路の実現を目指す。