全868文字
PR

 東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授は、セメントや樹脂などの接着成分を使わず、触媒を用いて砂同士を接着する建設材料を開発した(写真1)。直径と高さが2.5cmほどの硬化体の製造に成功。現段階で1mm2当たり8N程度の圧縮強度を確保できている。コンクリートの代替材として期待される。

写真1■ ケイ砂から製造した硬化体(左の2つ)と原料のケイ砂。中央がアルコールと触媒を混ぜて製造した硬化体で、左はこれをさらに加熱して強度を高めた(写真:日経クロステック)
写真1■ ケイ砂から製造した硬化体(左の2つ)と原料のケイ砂。中央がアルコールと触媒を混ぜて製造した硬化体で、左はこれをさらに加熱して強度を高めた(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 砂とアルコールと触媒を密閉容器に入れて加熱・冷却。砂の化学結合を切断・再生して硬化体を製造する。加熱温度は240℃程度で、1000℃以上が必要な溶融などに比べて低い。二酸化ケイ素を主成分とする材料であれば硬化が可能で、砂漠の砂や廃ガラスでも製造できる。

 「二酸化ケイ素は地球にある多くの砂や砂利の主成分であり、あらゆる場所で調達できる。枯渇の心配がない」(酒井准教授)

 二酸化ケイ素とアルコールを反応させると、テトラアルコキシシランと水を生成する。この反応は平衡状態なので、二酸化ケイ素は固体として、テトラアルコキシシランは液体として併存する。この際、テトラアルコキシシランは水と反応してゲル状の物質になり、二酸化ケイ素の粒子と粒子の間に入って接着剤のような働きをする(写真2)。

写真2■ 二酸化ケイ素を主成分とするガラスビースとアルコール、触媒を加熱して製造した硬化体を顕微鏡で見る。粒子と粒子を接着している状況が分かる(写真:東京大学酒井雄也研究室)
写真2■ 二酸化ケイ素を主成分とするガラスビースとアルコール、触媒を加熱して製造した硬化体を顕微鏡で見る。粒子と粒子を接着している状況が分かる(写真:東京大学酒井雄也研究室)
[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、生成した硬化体を加熱して脱水すると、テトラアルコキシシランが二酸化ケイ素に戻り、接着強度が増して硬化体の強度が高まる。

 酒井准教授は、ケイ砂を主成分とする砂の他に、砂漠の砂や月の砂と同じ成分構成の模擬砂などで硬化体を製造した。砂漠の砂は粒度が細かく均一なため、コンクリートの骨材としては使えないといわれていた。そんな砂の利用を可能にした。

 酒井准教授は、実用化に向けた今後の研究課題として3点を挙げる。強度アップと加熱時の低温化、硬化体の大型化だ。

 加熱温度を下げられれば、製造しやすくなる。現状の方法でも時間をかければ低い温度で硬化体を製造できる。「百数十度まで下げれば、アスファルトなどのように扱いやすくなる」と酒井准教授は説明する。

 大型化については、より容量の大きな製造装置での実験を予定している。大型にしても、物性に大きな変化が生じないかを検証する。