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 フジタセンシンロボティクス(東京都渋谷区)は、全自動で飛行・離着陸するドローンを使って建設現場の日々の出来高測量と安全巡視を無人化するシステムを共同開発した(図1)。ドローンの操縦者や目視確認を担う補助者の2人が不要になる。

図1■ ドローンは自動で離着陸
図1■ ドローンは自動で離着陸
全自動ドローンシステムの概要。ドローンは現場内に設置した基地から自動で離着陸する(資料:フジタ)
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 開発したシステムでは、開閉式のハッチを持つ箱形のドローン基地「SENSYN Drone Hub(センシン・ドローン・ハブ)」を建設現場向けに改良した(図2)。

図2■ 建設現場用に最適化
図2■ 建設現場用に最適化
全自動ドローンシステムの機材構成。ドローンは防水仕様で、多少の降雨でも飛行できる。ドローンの足が基地に接すると自動で充電する仕組みだ。気象計と連動し、風速や雨量がしきい値を超えた場合は飛行を中止する。離着陸の際は警報器が鳴り、周囲に知らせる。もともとプラントや工場向けに開発された機材を建設現場向けに最適化した(資料:フジタ)
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 毎日、決められた時間になると自動でハッチが開いてドローンが飛び立ち、現場を一巡しながら撮影し、基地に戻って充電する。撮影データはLTE通信でクラウドに送信。出来高測量や安全巡視に用いる。

 ドローンの巡回を作業員に周知して現場を無人地帯として扱い、目視外飛行を可能にした。フジタによると、建設現場での目視外・補助者なし飛行(レベル3)は初だ。

 測量には、フジタと山口大学が共同で開発した「斜め往復撮影」を用いる。ドローンのカメラを進行方向に10~30度ほど傾けて計測精度を向上。RTK(リアルタイムキネマティック)測位と組み合わせて、地上の「標定点」の設置を省略できる。作業時間は、従来の一般的なドローン測量に比べて4分の1ほどだ。

 クラウドに送信した測量データを基に、専用のソフトウエアで3次元の点群データやオルソ画像を作製し、土量などを算出する。

 安全巡視では、ドローンのカメラをズーム機能付きに切り替える。一定のルートを飛んで現場内を撮影し、データをクラウドに送信。それを安全担当の技術者などが事務所のパソコンで即時に確認する。日々の巡視記録が残るので、過去の作業状況を遡って確認できる。

 写真を分析して、安全巡視を補助する人工知能(AI)も実装した。車やコーン標識など重点的に確認したいものを自動で抽出する。安全上のリスクを効率よく発見して注意を促せるため、事故の防止に役立つ。

 フジタは、国土交通省四国地方整備局が発注した「令和元-4年度横断道羽ノ浦トンネル工事」で開発したシステムを導入した。1カ月にわたり、1日2回の安全巡視と毎日1回の測量を実施して効果を確かめた。