JFEエンジニアリングと画像認識技術を得意とするスタートアップのACES(エーシーズ)(東京都文京区)は、ドローンによる写真撮影と画像認識AI(人工知能)で、橋の合成床版の配筋検査を自動化するシステムを共同開発した(図1)。検査結果を3次元図面と重ねて、設計値との誤差を可視化する。JFEエンジニアリングによると、ドローンとAIを組み合わせて合成床版の配筋検査を自動化した例は世界で初めて。
開発したシステムではまず、ドローンで床版の写真を撮影。SDカードに保存したデータを専用のサーバーに移した後、画像認識AIが鉄筋を識別して抽出する。次に、鉄筋の継ぎ手長や本数、配置間隔を算出。エクセルで読み込める一覧形式の帳票に変換して出力する。
設計値との比較には、「帳簿化システム」を用いる。BIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の3次元設計モデルと計測結果を重ねて検証。計測値と設計値との誤差の大きさに応じ、色を分けて表示する。
一般に、ドローンによる空中写真測量で出来形などを計測する場合は、数センチメートルの誤差が生じる。開発したシステムではドローンを通常よりも40mほど低い高度10m以下で飛ばしたり、高画質のカメラを取り付けたりして、計測の誤差を5mm以下に抑えた。
合成床版の面積が約1530m2に及ぶ実橋での検証では、従来の巻き尺による計測で20時間かかっていたところを5時間に短縮した。
合成床版は鋼板とコンクリートの複合構造だ。床版の下面に加わる引張力は主に鋼板が受け持つので、鉄筋コンクリート床版と異なり下段の鉄筋は基本的に不要となる。配筋が1段だけで、鉄筋の位置を認識しやすい。
当面は、JFEエンジニアリングが請け負う合成床版の工事で利用する。今後、壁高欄や鉄筋コンクリート床版といった鉄筋同士が立体的に重なる部材にも使えるように、画像認識AIの改良などを進める。