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 大林組は、トンネル工事で使うシールド機先端のカッタービットの摩耗状況を、掘削土砂の色と匂いで把握する装置「摩耗検知ビット」を開発し、実用化した。摩耗が進んでいることに気づかず掘進してカッタービットを損傷し、掘進不能に陥るような事態を防げる。

 開発した装置は、泥土圧シールド工法で適用する。地山への添加剤の注入手法を応用し、染料や香料の噴出装置を内蔵したカッタービットを装備した。ビットが一定の摩耗量に達すると染料や香料を地山に噴出。チャンバー内でかき回しながら、掘削土砂に染料と香料で色と匂いを付着させる(資料1)。

資料1■ 摩耗が設定値に達すると染料を噴出
資料1■ 摩耗が設定値に達すると染料を噴出
シールド機先端に装備する摩耗検知ビットのイメージ。摩耗が設定値に達すると、検知ビット先端部の圧力を開放し、地山に染料や香料を噴出する(出所:大林組)
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 従来は、電気の導通や油圧の低下などを計測し、ビットの摩耗状況を把握していた。シールド機内部に摩耗状況を伝達するため、配管やケーブルの設置が必要だった。小口径のシールド工事だと、シールド機の外径が小さく、空間的な制約で多くの検知装置を設置できない。カッターヘッド全体を網羅した摩耗状況の把握が困難だった。

 「新装置は、従来装置に比べて配置スペースの制約が少なく、多数装備できる。カッターヘッド全体を網羅したビットの摩耗状況を把握できる」。大林組土木本部生産技術本部シールド技術部の大前慶恵副課長は、こう話す。

 パソコンなどでの解析は不要なので、掘進現場ですぐに摩耗状況を把握できる。「視覚と嗅覚という“作業者の感覚”を最大限利用する点がポイントだ」(大前副課長)