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 米国の海上橋梁拡幅工事で、コンクリート桁や杭の補強材の合計5500km分に、東京製綱インターナショナルが開発した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材料の採用が決まった(写真1図1)。CFRPは耐腐食性や軽量性に優れており、米国でインフラへの採用件数が近年急激に増えているが、これだけの規模で使われるのは初めてだ。

写真1■ 東京製綱インターナショナルが開発した炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)。炭素繊維とエポキシ樹脂を複合化して、より合わせて形成した(写真:東京製綱インターナショナル)
写真1■ 東京製綱インターナショナルが開発した炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)。炭素繊維とエポキシ樹脂を複合化して、より合わせて形成した(写真:東京製綱インターナショナル)
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図1■ 海上の橋梁を2車線から4車線に拡幅
図1■ 海上の橋梁を2車線から4車線に拡幅
ハンプトンロードブリッジトンネル拡張事業の完成予想図(下)と現状(上)(資料:バージニア州運輸局)
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 採用されたのは、バージニア州運輸局が発注した「ハンプトンロードブリッジトンネル拡張事業」だ。海上の州間高速道路64号を、片側2車線から4車線に拡幅する。総工費は約4000億円(38億ドル)、工期は2020年9月~25年11月だ。

 この事業では、海上部約8.6kmの橋桁の緊張材と杭の緊張材・スパイラル補強筋とに、東京製綱インターナショナルが開発・販売するCFRPの炭素繊維複合材ケーブル(CFCC)を使う。緊張材の長さは3962km、補強筋が1524kmだ。

 米国では近年、CFRPの採用を後押しする環境が整ってきた。18年に米国全州道路交通運輸行政官協会(AASHTO)がCFRPをコンクリート橋桁の緊張材に使う設計基準を制定。ミシガン州やバージニア州のように、CFCCの設計基準を独自に作成する州もある。

 ハンプトンロードブリッジトンネルでは、バージニア州運輸局が緊張材などの材料に、ステンレスまたはCFRPを指定していた。19年に工事を受注した共同企業体が検討した結果、最終的にCFRPが選定された。

 「緊張材の値段はステンレスとほぼ同じ。ただし重量は鋼材の5分の1と軽い。現場での作業性などを評価してもらったのではないか」(東京製綱インターナショナルCFCC土木建築事業部の山本義明部長)

 同社のCFCCはこれまで、米国9州で36のプロジェクトに採用されてきた。ハンプトンロードブリッジトンネル拡張事業では、これまでの実績と比べものにならない量のCFCCを使用する。同事業での販売見込み額は40億円前後だ。

 同社によると、20年のCFCCの出荷量は前年と同水準を見込む。一方、21年からの3年間で、出荷数量は20年の約6倍に伸びると予測している。山本部長は、「米国の大型プロジェクトでの採用が1つの契機となって、日本でも腐食しない炭素繊維複合ケーブルの普及が進んでいけば」と期待を寄せる。