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国土強靱化と人手不足のジレンマ
亀山 岳雄(60、中央官庁)

 大型の台風や線状降水帯の発生などにより、数十年に一度の豪雨が日本各地を頻繁に襲うようになってきた。日本列島はもはや「災害列島」と化している。政府は人命やインフラを守るための取り組みに2020年度末までの3年間で7兆円もの事業費を投じる方針だ。防災機能を高めるなど、「国土強靱化」の政策そのものは大変有意義だと思う。

 しかし、対策工事を取りまとめる発注者のマンパワーが足りない現実にも目を向けなければならない。私が所属する事務所でも、予算に見合う設計業務と工事をさばけていない現状がある。受注してくれるはずの建設業従事者の高齢化が進んでおり、現場の技術者や技能者が足りないことも一因だ。

 外国人技能労働者の活用やICT(情報通信技術)の導入など、人手不足を補うための取り組みは当然、進める必要がある。一方、事業の優先順位をきちんと評価する仕組みがなければ、人繰りがつかずに業務や工事の品質がないがしろにされていくのではないだろうか。用地の取得状況や設計の進捗などを踏まえ、どの事業から取り組むべきか、総合的に判断する必要性を感じている。