「世界で最も美しい」アーチ部材を保存
米国の東海岸に、「世界で最も美しい」と呼ばれる鋼橋がある。1931年に建造された橋長2kmを超す中路式アーチのベイヨン橋だ(写真1、2)。年間350万台の交通量を誇る同橋で、道路を供用しながら橋面を約20m上に付け替える前代未聞の工事が実施された。パナマ運河の拡張に伴って増加する超大型タンカーを、橋の下に通すためだ。
「歴史的なランドマークを保全できるうえに、近隣との交渉や買収用地が不要だ。環境調査の期間も短くて済むので、かさ上げを選んだ」。
発注者であるニューヨーク・ニュージャージー港湾公社(PANYNJ)のメジャーキャピタルプロジェクトチーフであるスティーブ・プレート氏はこう振り返る。架け替えよりも工費や工期を抑えられた。
かさ上げの工事では、橋のデザインを保持するようにアーチ部材を残したまま、現況の橋面の上にもう1つ新しい橋面を構築した。路面から水面までの高さは、従来の約46mから約65.5mになった(写真3、図1)。