流線形のフォルムで飛び立つ白鳥を表現
「北欧のパリ」と称されるデンマークの首都、コペンハーゲン市。歴史的建造物が数多く残る南東部のクリスチャンハウン地区と市の中心部とをつなぐ自転車・歩行者専用の鋼橋「リリーランゲブロ」が、2019年夏に完成した(写真1~3、図1)。
設計を手掛けたのは、英国に本拠を置くエンジニアリング会社ブローハッポルドと同じく英国の設計会社ウィルキンソンアイアーとを中心とした合同チーム。37チームが参加した国際コンペで15年に選ばれた。施工は、デンマークとオランダの建設会社2社の共同企業体が担当した。
リリーランゲブロは、長さ175m、幅11mのエッジビーム構造による旋回橋。鋼製の桁は4つのパーツから成る。それぞれの長さは、両端の固定部が42mと44m、それらに挟まれる2つの回転部が44mと45m。回転部が開いたときには、幅35mの海上交通を確保できる(写真4~6)。
同橋は旋回橋であるものの、中央部で5.4mの桁下高さを確保する必要があった。その上で、「橋の両サイドにトラスのような構造物を設けず、利用者の眺望や港の景観を妨げないようにした」(ブローハッポルドのシモン・フライヤー氏)
三角形断面のエッジビームはうねりながら曲線を描き、橋全体にシャープな印象を与える。設計を担当したウィルキンソンアイアーのジム・アイアー氏は「光と影を分割し、両者間の極めて精緻な細いラインが得られた」と説明する(図2、写真7、8)。
中央部に向かってうねりながら上昇する流線形のフォルムは、飛び立つ白鳥のイメージだ。「アンデルセンの童話に出てくる白鳥はデンマークの国のシンボルであり、ロマンチックな物語を想起させる」。発注者である非営利団体のリアルダニアのペーター・ファンガス・ポールセン氏はそう評価する。
地図上でクリスチャンハウン地区を見ると、かつての要塞の防壁跡がくっきりと残っている。市役所からヴェスタルボルガーダ(西城壁)通りを南東に真っすぐ下っていくと、リリーランゲブロを経て、それらの防壁跡につながる。
リアルダニアのポールセン氏は、「リリーランゲブロは昔の要塞のラインを再創出するものだ」と説明する。曲線を描く橋の線形は、設計の与条件でもあったのだ。
同橋には自転車用に幅4m、歩行者用に幅3mのレーンがそれぞれ設けられている。両者の間にはラインが1本引かれただけで、実際には利用者がどちらを使っても構わない。その柔軟性もコンペで評価された。