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 岐阜県美濃市を流れる長良川に、“百寿”を超えるケーブルの吊り橋が架かっている。10年近い修復事業期間を経て、2021年3月に供用を再び開始した美濃橋だ(資料1、2)。緑の山並みに鮮やかに映える赤い補剛桁が特徴的だ。

資料1■ 2021年3月に修復工事が完了した岐阜県美濃市の「美濃橋」。補剛桁や主塔を補修したほか、右岸のアンカレイジ付近を補強した(写真:大村 拓也)
資料1■ 2021年3月に修復工事が完了した岐阜県美濃市の「美濃橋」。補剛桁や主塔を補修したほか、右岸のアンカレイジ付近を補強した(写真:大村 拓也)
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資料2■ 美濃橋は、橋長113m、幅員3.1mの単径間補剛吊り橋。鉄筋コンクリート造の主塔は炭素繊維で補強した(写真:大村 拓也)
資料2■ 美濃橋は、橋長113m、幅員3.1mの単径間補剛吊り橋。鉄筋コンクリート造の主塔は炭素繊維で補強した(写真:大村 拓也)
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 美濃橋の架橋は1916年。国内に現存する近代吊り橋としては最古だ。修復前は補剛桁の腐食など、老朽化が目立っていた(資料3)。2003年に国の重要文化財に指定されており、修復工事では100年以上、供用し続けてきた橋の構造形式や外観をできるだけ残すことが大命題となった(資料4)。

資料3■ 修復前。主塔や補剛桁の老朽化が目立っていた。1975年に岐阜県から美濃市に移管(資料:美濃市)
資料3■ 修復前。主塔や補剛桁の老朽化が目立っていた。1975年に岐阜県から美濃市に移管(資料:美濃市)
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資料4■ 補剛桁はダブルワーレントラス。上弦材と吊り横桁を斜材でつなぐ。塗装の色は過去に数回変えている(写真:大村 拓也)
資料4■ 補剛桁はダブルワーレントラス。上弦材と吊り横桁を斜材でつなぐ。塗装の色は過去に数回変えている(写真:大村 拓也)
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 設計・監理は文化財保存計画協会(東京都千代田区)が、設計協力は大日本コンサルタントがそれぞれ担当。設計に先立つ詳しい現地調査では、右岸の継ぎ手ソケットとアンカレイジの間でケーブルが劣化し、約30%の強度低下が推定された。

 そこで、右岸アンカレイジを囲む鉄骨構造を新たに設置。補強用の鉄骨のロッドを配置することで、劣化したケーブルにかかる張力の一部を分担。既存ケーブルをそのまま利用することに成功した(資料5)。ケーブルは建設当時にスウェーデンから輸入されたもので、1世紀以上を経た今も、現役で使われ続けていることになる。

資料5■ 鉄骨ロッドを新設しケーブル張力の一部を分担
資料5■ 鉄骨ロッドを新設しケーブル張力の一部を分担
文化財保存計画協会の資料を基に日経コンストラクションが作成
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[修理前後のアンカレイジ]
[修理前後のアンカレイジ]
上は修理前、下は修理後。ソケットとアンカレイジ間は長年地中に埋もれて劣化したと推測(写真:大村 拓也、上は文化財保存計画協会)
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 美濃橋の設計・監理を10年近く担った文化財保存計画協会の崔静妍(チェジョンヨン)主任研究員は、次のように話す。「引っ張り調整の継ぎ手ソケットは近代の革新技術。美濃橋がソケットで主塔側ケーブルにつながる構造のため、部分的な補強が可能となり、貴重な既存ケーブルを残せた」

 大日本コンサルタント中部支社構造保全計画室の藤本直也室長は、「ソケットとアンカレイジ間の劣化したケーブルの張力は、新設した計4本のロッドが補完する設計とした。仮にケーブルが傷んでも、ロッドが代われるよう担保してある」と話す。