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高低差4.5mの敷地を4つの広場と階段でつなぐ

 坂道を上っていくと、歩道との境界をなくした開放的な公園が現れた。東京都千代田区の千鳥ケ淵沿いに2020年3月、リニューアルオープンした「九段坂公園」だ。東京五輪・パラリンピックを契機に、千代田区が整備した。

 靖国通りと千鳥ケ淵に挟まれた同公園は、東西に細長く約120m続く。縦断方向の高低差4.5mの敷地に平らな広場を4つ設け、これを階段でつなげた。都心に出現した棚田のようなデザインだ(写真12)。

写真1■ 東京都千代田区の靖国通りに面した「九段坂公園」を東側から見る。縦断方向4.5mの高低差の敷地を広場と階段でつないだ(写真:吉田 誠)
写真1■ 東京都千代田区の靖国通りに面した「九段坂公園」を東側から見る。縦断方向4.5mの高低差の敷地を広場と階段でつないだ(写真:吉田 誠)
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写真2■ 坂になった歩行空間と公園の広場をつなぐ階段は昇降しやすいように踏み面400mmと広くした。蹴上げは150mm(写真:吉田 誠)
写真2■ 坂になった歩行空間と公園の広場をつなぐ階段は昇降しやすいように踏み面400mmと広くした。蹴上げは150mm(写真:吉田 誠)
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 改修前の姿は違った。歩道に対して公園の敷地が高く、間を植栽帯が隔てていた。歩道が通行人で混雑するときでも、平行する園路に流れてくる人は少なかった(写真3)。

写真3■ 改修前。靖国通りの歩道との境に擁壁と植栽帯が続いていた(写真:山田 裕貴)
写真3■ 改修前。靖国通りの歩道との境に擁壁と植栽帯が続いていた(写真:山田 裕貴)
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 今回の改修で区は、歩道との境界物を極力なくしたうえで公園の地盤高さを歩道に合わせ、広幅員の歩行空間を創出。さらに、旧公園の西側に接する消防署跡地を拡張エリアとして公園に編入し、旧公園エリアと一体的に整備した(図12)。

図1■ バリアフリールートを確保
図1■ バリアフリールートを確保
階段を通らず歩道と各広場を結ぶ動線の他、千鳥ケ淵沿いに斜路を設けた。千代田区、国際開発コンサルタンツ、Tetorの資料を基に日経コンストラクションが作成
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図2■ 4.5mの高低差を4つの広場と階段で解消
図2■ 4.5mの高低差を4つの広場と階段で解消
計画ラインがスロープ状に続く四季の広場付近は、歩道橋脇に確保した歩行空間の縦断面を示す。千代田区、国際開発コンサルタンツ、Tetorの資料を基に日経コンストラクションが作成
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 デザイン監修は、Tetor(テトー、東京都新宿区)の山田裕貴代表が担当した。「園内へ自由に出入りできるようにしたうえで、“動く人の動線”と“たたずむ人の空間”を分けた」と山田代表は話す。

 分散配置した4つの平らな広場は、歩道側から階段を使わずに入れるルートを確保。千鳥ケ淵沿いにも幅員2mのバリアフリールートを設けた。一方、人が長く滞留すると想定した千鳥ケ淵を眺望するスポットでは、通行人に視界を遮られないように、千鳥ケ淵側に寄せてベンチを配置。ベンチを兼ねた植栽升も多く配置し、限られた面積の中で効率よく歩行空間や休息場を確保した。

 これら公園づくりのベースとなったのが、敷地高低差の処理の仕方だ。デザインの段階では、「3分割」「4分割」「細かく分節」の3案を基に、比較検討した(図3)。

図3■ 分割方法を3パターンで比較
図3■ 分割方法を3パターンで比較
旧公園エリアは、既存の2分割の地盤高を基本的に踏襲。拡張エリアは、A案がスロープ状、C案が細かく分節で、イベント活用できる平場を確保したB案を選定した。千代田区、国際開発コンサルタンツ、Tetorの資料を基に日経コンストラクションが作成
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 「旧公園エリアは、歴史的な銅像群を現位置で保全するために既存の地盤レベルを踏襲する必要があった。スロープ状だった拡張エリアは、イベント時にテントを設営しやすいように地元団体がフラットな広場を望んでいた」。設計を担当した国際開発コンサルタンツの芳賀稔常務取締役東京支店長はこう話す。

 区が選んだのは、拡張エリアに平らな2つの広場を確保できる4分割案。「視線が通りやすく、かつ圧迫感を低減する意図もあり、広場の高低差は1m以内に収めた」(山田代表)

 現地では、歩道から自然と園内を通る人や、ベンチでランチを楽しむ人を見かけた。まちと堀に開いた公園は、意図したとおりに使いこなされていた。