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宙に浮かぶ軽やかな遊歩道、銅像の脇役に

 標高35mほどの丘を登ると、頂上に空中回廊が姿を現す。横浜市にある中高一貫校、浅野中学・高等学校のキャンパスに2020年3月に完成した「浅野学園創立100周年記念リングおよび広場」だ(写真1、2)。

写真1■ 横浜市にある中高一貫校のキャンパスに2020年3月、空中回廊と広場が完成した。回廊の床版には超高強度繊維補強コンクリート「ダクタル」を採用。補強用の鉄筋が不要で、床版の厚さは最も薄い所でわずか32mmしかない(写真:安川 千秋)
写真1■ 横浜市にある中高一貫校のキャンパスに2020年3月、空中回廊と広場が完成した。回廊の床版には超高強度繊維補強コンクリート「ダクタル」を採用。補強用の鉄筋が不要で、床版の厚さは最も薄い所でわずか32mmしかない(写真:安川 千秋)
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写真2■ 広場に続くアプローチから見る。写真右奥は学園創立者、浅野総一郎の銅像。空中回廊は銅像の台座につながり、銅像の表情が見てとれる高さに計画した。床版上面の最高高さは地面から3.4m。人が下を通るため、床版下面のデザインにも気を配った。7本ある鉄骨柱のうち、西側斜面寄りの5本は基礎同士を地中梁でつなぎ、安全性を高めた(写真:安川 千秋)
写真2■ 広場に続くアプローチから見る。写真右奥は学園創立者、浅野総一郎の銅像。空中回廊は銅像の台座につながり、銅像の表情が見てとれる高さに計画した。床版上面の最高高さは地面から3.4m。人が下を通るため、床版下面のデザインにも気を配った。7本ある鉄骨柱のうち、西側斜面寄りの5本は基礎同士を地中梁でつなぎ、安全性を高めた(写真:安川 千秋)
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 直径約27cmの細い鉄骨柱で支える回廊の床版は幅1.8m、厚みは最も薄い所で32mmしかない。麓から見上げると、まるでリングが宙に浮いているかのようだ。薄く軽やかな構造体は超高強度繊維補強コンクリート「ダクタル」によって実現した。

 キャンパス内には「銅像山」と呼ぶ丘があり、学園の創立者で実業家の浅野総一郎の銅像が以前からあった。その台座につながる空中回廊は銅像の手前で低く、銅像から離れるに従って高くなる。設計した空間構想(東京都文京区)は単なる展望施設でなく、銅像の表情を眺め、創立者を身近に感じられる場を目指した。

 プロジェクトのきっかけは、銅像山の西側斜面の防災対策だ。浅野学園は斜面の排水工事と併せ、銅像周辺に広場の整備を計画した(写真3)。

写真3■ 改修前の銅像山。生徒の部活動のランニングコースや教職員の駐車場などとして使われていた(写真:ペトロフ・スベテリン)
写真3■ 改修前の銅像山。生徒の部活動のランニングコースや教職員の駐車場などとして使われていた(写真:ペトロフ・スベテリン)
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 広場に空中回廊を架けようと提案したのが、空間構想の設計アドバイザーで建築設計を専門とする東京大学生産技術研究所の川添善行准教授だ。同学園の卒業生として、銅像山をよく知っていた。

 高さ12mもある銅像は、地上から見上げても顔の表情がよく分からない。「高い位置に空中回廊を架けられないか。生徒が創立者の顔をビジュアルイメージで記憶し、実業家としての実績や歩みを等身大に学ぶ。そんな場を新技術と美しいデザインで造ろうと考えた」(川添准教授)

 回廊の東側からは、総一郎が開発を手掛けた臨海部の京浜工業地帯が見渡せる。日本のコンクリート産業を先導した総一郎にちなみ、床版にはダクタルを採用。さらに、総一郎の足跡を時系列に刻んだ石板を床版上面にはめ込んだ。「銅像のインパクトを強調する脇役として、回廊の床版はできるだけ薄く、目立たない形にした」と、空間構想のペトロフ・スベテリン氏は話す(図1~3)。

図1■ 銅像への視点場を高く
図1■ 銅像への視点場を高く
西立面図。空間構想の資料を基に日経コンストラクションが作成
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図2■ 14枚の床版パネルでリングを組む
図2■ 14枚の床版パネルでリングを組む
空間構想の資料を基に日経コンストラクションが作成
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図3■ 床版両端に手すりを取り付け
図3■ 床版両端に手すりを取り付け
空間構想の資料を基に日経コンストラクションが作成
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床版端部に埋め込んだ手すりの強度試験。東亜建設工業がKAPと協力して実施した(写真:東亜建設工業)
床版端部に埋め込んだ手すりの強度試験。東亜建設工業がKAPと協力して実施した(写真:東亜建設工業)
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 14枚のダクタル床版を工場で製作した後、現地でスタッド付きの鉄骨梁と一体化。鉄骨梁と鉄骨柱の接合部も美しく仕上げるため、あらかじめ工場で溶接した。

 床版端部の厚みはリングの外周側で45mm、内周側で32mmしかない。構造設計を担当したKAP(東京都千代田区)の岡村仁代表は「床版端部に固定する手すりの安全性を慎重に検討する必要があった」と明かす。

 手すり周りの強度試験は、施工者である東亜建設工業が実施。設計基準の2倍以上の強度があることを確かめた。