札幌市の新さっぽろ駅周辺地区で、市道に“浮かぶ”楕円形の物体が新設された(資料1)。2022年7月に一部で供用開始した空中歩廊の「アクティブリンク」だ。壁一面をシール目地とガラスで構成しており、柱などはない(資料2)。
「中から外の景色や街区の建物が一望できて、屋外からは内部の人の活動が見える。全ての建物をつなぐ円環状の『アクティブリンク』をつくることで、ここが街の中心だと分かり、一体感が生まれると考えた」。設計を担った大成建設の設計本部先端デザイン部の出口亮シニア・アーキテクトはこう話す。
同地区は札幌市の副都心として昭和40年代に大規模開発された。JR、地下鉄、バスターミナルの交通結節点にある。しかし、「近年は少子高齢化や開発の停滞で街の魅力が薄れてきた。さらに、地下鉄やJRが重層的に配置されるほか、駅舎で南北の街が分断されるなど、歩行者動線上の課題も抱えていた」と、札幌市まちづくり政策局都市計画部の小仲秀知事業推進課長は説明する。
そこで市は質の高い複合市街地の形成に向け、新さっぽろ駅周辺地区のG街区とI街区で民間活力を活用した街づくりに取り組んでいる。アクティブリンクは広さ約3.9ヘクタールのI街区に完成した(資料3)。
空中歩廊の主構造は、52ブロックの鉄骨部材で構成する外周部のフレームだ。採用した構造形式は橋梁などで見られる「フィーレンデールトラス構造」。梯子状に部材を剛結するもので、これらが歩廊全体を支える役目を果たす。
12本の柱は外周部に立て、内側に倒れ込もうとする力を閉じた楕円の形でバランスさせた(資料4)。柱に近づくにつれてせん断力が増すため、鉄骨部材のウェブは柱に近づくほど幅が大きくなっていく。温度変化による鉄骨の伸び縮みに伴う応力も、環状なのでバランスよく逃せる。