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ハリケーンの被害を受けて方針転換

 米国ニューヨーク市を流れるイーストリバー沿いの埋め立て地に、人も生物も過ごしやすい湿地帯を備えた公園が2018年夏に完成した。ハンターズ・ポイント・サウス・ウオーターフロント公園だ。カンチレバー式の展望台からは、ニューヨークの摩天楼を一望できる(写真1)。

写真1■ 高さ6.7m、長さ15.24mの木製ボードから成る展望台。マンハッタンの摩天楼を一望できる。周辺には湿地帯を設けている(写真:Vecerka/Esto, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
写真1■ 高さ6.7m、長さ15.24mの木製ボードから成る展望台。マンハッタンの摩天楼を一望できる。周辺には湿地帯を設けている(写真:Vecerka/Esto, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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 同公園では衰退した工場跡地の再生を目指し、古いガントリークレーンと鉄路の産業遺産を生かした整備を進め、13年に第1期が完成した。

 一方、第2期における2万4000m2に及ぶ公園の拡張と0.67kmの川沿いの整備では、レジリエンス(回復力)とサステナビリティー(持続性)をテーマとした整備に方針を転換している(図1)。近年の異常気象を受けて盛り込んだ、災害対策の画期的なアイデアが話題を呼んでいる。

図1■ 第2期は緑が多い
図1■ 第2期は緑が多い
平面図。第1期は、50番街から54番街まで、第2期は54番街からニュータウンクリークまで(資料: SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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 テーマを変えるきっかけとなったのが、12年10月末から11月にかけてニューヨーク市を襲ったハリケーン・サンディだった。

 第1期と第2期を通じた合同設計チームでデザインを担当したワイス・マンフレディ建築事務所のリー・リムプロジェクトマネジャーは、こう話す。「第1期で整備した楕円形の人工の芝地は浸水したものの、自然芝のエリアを縁取るコンクリートの段差に守られて、水は芝生内にとどまり、近隣への被害はほぼなかった」(写真2)。

写真2■ 第1期に整備した人工芝の楕円形広場。2012年10月22日から11月2日にニューヨークを襲ったハリケーン・サンディで浸水したが、コンクリートの段差と天然芝が被害の拡大を食い止めた(写真:伊藤 みろ)
写真2■ 第1期に整備した人工芝の楕円形広場。2012年10月22日から11月2日にニューヨークを襲ったハリケーン・サンディで浸水したが、コンクリートの段差と天然芝が被害の拡大を食い止めた(写真:伊藤 みろ)

 当時のマイケル・ブルームバーク市長は地球温暖化対策を市政の重要指針に掲げており、公園に続く道路にバイオスエル(生物低湿地)を整備。それが功を奏し、雨水を吸収した。しかしながら、完成間近だった人工設備などはハリケーンで無残にも破壊された。

 そこで第2期の計画では、100年確率で起こる大水害を想定。自然が持つ回復機能に注目し、堤防の浸食を防ぐために、沿岸部に約6000m2の湿地帯を新設した。公園の中央に突き出た半島は、潮の満ち引きによって陸から切り離される(図23)。持続的な水質の改善や生態系の回復にも役立っている。

図2■ 100年に1度の災害も見据えてデザイン
図2■ 100年に1度の災害も見据えてデザイン
現状の満潮時(上)と100年確率の大規模な水害が起こった際の浸水イメージ(下)(資料: SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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図3■ 時には陸から切り離された島に
図3■ 時には陸から切り離された島に
第2期に整備した人工の半島は、潮の満ち引きによって、陸から切り離された島になる (資料: SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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 加えて、第1期では直線的な散歩道や隔壁を敷設していたが、第2期では散歩道を川岸の地形沿いに蛇行させた。歩くたびに景観の移り変わりを楽しめる(写真3)。

写真3■ 前を流れるのはイーストリバー。地形沿いに散歩道を蛇行させている。ハンターズ・ポイント・サウス・ウオーターフロント公園は、米国ランドスケープ協会(ASLA)による「2019 Professional Honor Award」(総合デザイン)に選出。SWA/BALSLEY + WEISS/MANFREDI とArupの合同チームが受賞(写真: Vecerka/Esto, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
写真3■ 前を流れるのはイーストリバー。地形沿いに散歩道を蛇行させている。ハンターズ・ポイント・サウス・ウオーターフロント公園は、米国ランドスケープ協会(ASLA)による「2019 Professional Honor Award」(総合デザイン)に選出。SWA/BALSLEY + WEISS/MANFREDI とArupの合同チームが受賞(写真: Vecerka/Esto, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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 水害対策として設けた擁壁は、湿地帯を区切る他、高台プロムナードの階段式テラスとしても機能する。読書スペースなどが設けられ、人気の撮影スポットとなった(写真4)。市民や観光客が水際で、自然や美しい景観とじっくりと向き合う都会のオアシスになっている。

写真4■ 水害対策の擁壁は、湿地帯を区切る役割を担う(写真:Lloyd/SWA, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
写真4■ 水害対策の擁壁は、湿地帯を区切る役割を担う(写真:Lloyd/SWA, SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
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12万m2以上を住宅地区へ

 イーストリバー沿いのこの地域は20世紀前半までは、砂糖精製業の中心地として栄えていたが、工場や港が移転し、21世紀初頭に衰退した。この12万m2以上の産業地域(写真5)を、7つの集合住宅群を備えた中産階級向けの住宅地区として整備したのが、ハンターズ・ポイント・サウス再開発プロジェクトだ。

写真5■ 写真左側を流れるイーストリバーと写真右側の入り江(ニュータウンクリーク)に挟まれた沿岸部が、ハンターズ・ポイント・サウス再開発プロジェクトの範囲(写真:SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)
写真5■ 写真左側を流れるイーストリバーと写真右側の入り江(ニュータウンクリーク)に挟まれた沿岸部が、ハンターズ・ポイント・サウス再開発プロジェクトの範囲(写真:SWA/Balsley and WEISS/MANFREDI)

 NYCEDC(ニューヨーク経済開発公社)がディベロッパーとなり、公園余暇局とデザイン・建設局が協働している。

 NYCEDC前最高執行責任者のブリジット・キーティング氏は、「ニューヨーク市クイーンズ区のロング・アイランド・シティ地区に約12万m2以上の全く新しい地域コミュニティーが生まれた」と話す。

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