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信濃川下流地質調査業務(新潟県)
発注者:国土交通省北陸地方整備局信濃川下流河川事務所
受注者:興和

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 信濃川下流域の治水対策の一環として実施する河道掘削事業に備え、掘削箇所の地質を調査する業務だ。

 掘削対象エリアの土質やその分布状況を把握。掘削工事の安全対策や掘削後に発生する土砂の再利用などに向けた検討資料を作成する。具体的には、ボーリングやサウンディングによる調査の他、採取した試料の土質試験、収集したデータの解析などを実施した(図1)。

図1■ 掘削検討範囲の一部で土質特性などを調査
図1■ 掘削検討範囲の一部で土質特性などを調査
調査対象となった信濃川下流の新潟県三条市井戸場地区(赤で着色したエリアの一部)。河道掘削事業の検討に必要な掘削土砂の分布状況や土砂特性などを調査した。国土地理院の写真に日経コンストラクションが加筆
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 担当した興和(新潟市)は、当該業務だけでなく、河道掘削事業全体を見据えた提案や取り組みを積極的に行った。例えば、後に発注される同様の業務を念頭に置いた調査時の基本的なルールづくりや、次工程の掘削工事などにも役立つ3次元地盤モデルの作成などだ(図2)。

図2■ 河道掘削に向けた地質データを整備
図2■ 河道掘削に向けた地質データを整備
(資料:興和)
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 発注者の国土交通省北陸地方整備局信濃川下流河川事務所は、こうした取り組みを高く評価。同社は成績評定で82点を獲得し、2020年度の局長表彰を受けた。作成した3次元地盤モデルの有効性が認められ、国交省の「i-Construction大賞」で20年度の優秀賞にも選ばれている。

 信濃川下流河川事務所によれば、この業務の背景には、河道掘削で発生する土砂が膨大で、その処理費用をいかに抑えるかという課題がある。そこで、掘削箇所の土砂分布や発生土砂の量・性状を把握。他の事業にそのまま利用できる土砂と改良が必要な土砂とを判別し、コスト削減策の立案に役立てることにした。

後続の調査も視野に調査基準を設定

 同事務所は興和に対し、「調査データの精度を向上させ、得られたデータを掘削工事などで利用しやすいように“見える化”してほしい」などと要望。同社はこうしたニーズを踏まえ、自主的に2つの取り組みを提案・実施した。

 1つは、調査を行ううえでの基本ルールの設定だ。主任技術者を務めた同社調査部の真島淑夫部長代理が調査を始める前、過去に他社が別の対象エリアで手掛けた同様の業務の成果品を確認したところ、試験を行う回数や間隔といった基準が調査箇所によってまちまちで、統一されていなかった。そこで発注者と話し合いを重ね、試験箇所の間隔や調査深度などのルールを設定した。

 「調査や試験を計画する際の基本的なルールを決めておけば、今後の同様の業務が合理化される。さらに、担当者が変わっても、同じ方針で調査していれば、データを活用しやすくなると考えた」(真島部長代理)

 こうした真摯な姿勢は、発注担当者に信頼感をもたらした。信濃川下流河川事務所の渡辺重紀副所長は「現場状況を把握し、課題に対する詳細な業務執行フローを理解しやすい形で説明してくれた」と評価する。関連する評定項目の「実施体制と執行計画」は、20点満点中の16.5点と高得点だった。