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佐藤 和徳(さとう・かずのり) 日本大学工学部研究特命教授
佐藤 和徳(さとう・かずのり) 日本大学工学部研究特命教授
1956年生まれ。79年東北学院大学工学部卒業後、建設省東北地方建設局(現:国土交通省東北地方整備局)に採用。東北技術事務所を経て、2012年から道路部道路工事課長に。14年に南三陸国道事務所長に就任して、17年3月に退職。同年8月に日本大学工学研究所の教授になり、18年6月から現職(写真:吉成 大輔)
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佐藤氏の3講義目では、品質確保から耐久性確保にテーマを移す。設計時点で構造物に劣化外力に対する抵抗性能を付与するには、発注者の果たすべき役割が大きい。劣化に関する正しい知識に基づき果敢に対策を練り、将来、補修で余計な負担が増えないようにすべきなのに、その認識があまりにも希薄になっているという。まずは、「主部材で再劣化しやすい劣化」をなくすことから始めよう。

 品質確保に比べて、なかなか進まないと感じるのが耐久性確保です(Qを参照)。耐久性確保とは、劣化外力に対して構造物が抵抗力を持つ状態に設計することを指します。

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 図1は私が東北地方整備局時代に耐久性確保を実践しようとして、職員からよく耳にした愚痴や不満です。このような言葉が聞こえてくると、ほとんどの場合、耐久性確保は実現しません。

図1 ■ 耐久性確保が進まない理由
図1 ■ 耐久性確保が進まない理由
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 実は耐久性確保を阻む要因は、ほぼ発注者側にあると言っても過言ではない。発注者が劣化の実態や耐久性確保の必要性を認識して、正しい劣化に関する知識に基づき果敢に対策を練り、将来、補修で余計な負担が増えないようにすべきなのです。その認識があまりにも希薄になっているから、正しい耐久性確保はなかなか普及しません。

組織としての必要性の認識

 特に耐久性確保が進まない理由の1つが、組織としてその必要性を認識していない発注者が多いということです。既設構造物の点検データは、補修に使われているだけで、地域の劣化の実態や原因、現在の技術基準との関係を分析するために使われていないのが通常です。このような場合には、対策すべき劣化があっても、組織としてその必要性を認識していませんから、従来仕様のまま構造物が造られていきます。

 2つ目が、基準の運用変更への抵抗感です。一般に皆が従っている技術基準なのに、自分の地域だけ運用を変えることに抵抗を感じる人がほとんどなのです。その運用を変えないと今の技術基準では耐久性を確保できないと分かっていても、口に出せない状況もあると思います。この場合は、国の基準が改定されなければ何も変わりません。

 供用下の気象環境がマイルドな地域では、現在の基準でも劣化は急速に進みませんから、今以上の耐久性確保は必要ないかもしれません。しかし、東北地方のように寒冷な気候や凍結防止剤の影響がある地域では、劣化は急速に進むし、現在の技術基準のままでは劣化しやすい構造物ができてしまう──。この認識がないから今の技術基準の運用を改善することに抵抗があるわけです。