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補修の必要性を感じつつも、お金や人の不足を理由に十分な対策を打てない──。そうした自治体の困りごとに対応するため、小規模な橋梁向けの安価で取り扱いやすい補修技術が登場している。

 飛来塩分や凍結防止剤の散布による塩害は、道路管理者を悩ませる劣化の1つだ。

 代表的な塩害対策に、電気防食や電気化学的な脱塩工法がある。いずれも高価なうえ、大掛かりな装置を必要とする。維持管理に割ける予算や人員が不足する自治体には手を出しにくい工法だ。とはいえ、断面修復やひび割れ注入といった手ごろな工法でその場をしのいでも、抜本的な解決にならない場合が多い。

 そうしたなか、塩害が進む小規模橋梁を管理する自治体にとって、“救世主”となる技術が生まれつつある。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の下、金沢大学の鳥居和之特任教授率いる「北陸SIP」の研究グループが開発した簡易で安価な電気防食工法だ(写真1)。

写真1■ 金沢大学の鳥居和之特任教授が指差すのは、表面設置型の陽極材。高速道路から切り出した劣化床版に取り付け、塩害環境下で効果を検証している(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 金沢大学の鳥居和之特任教授が指差すのは、表面設置型の陽極材。高速道路から切り出した劣化床版に取り付け、塩害環境下で効果を検証している(写真:日経コンストラクション)
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 従来の電気防食の半分ほどの費用で、鉄筋の腐食を防げる。今年1月以降、既設橋梁での実証試験を進めている(写真2)。

写真2■ 実証試験の対象となった石川県の海沿いにある小規模なコンクリート橋(写真:北陸SIP)
写真2■ 実証試験の対象となった石川県の海沿いにある小規模なコンクリート橋(写真:北陸SIP)
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 電気防食は、鉄筋に微弱な電流を流し、さびを発生しにくい電位に変化させる工法だ。従来は外部電源を使って電気を流すのが主流だったため、初期費用が高くつき、対象範囲が狭いと不経済になっていた。外部電源は水や衝撃などによって不具合を起こしやすく、維持管理の負担が大きい課題もあった。

 そこで、鳥居特任教授らが着目したのが、「流電陽極方式」だ。外部電源が不要で、陽極材として使う亜鉛と鉄筋を接続し、両者の電位差を利用して防食電流を発生させる。取り付けやすさを工夫し、陽極材をコンクリートの表面に設置するタイプと、より深い位置にある鉄筋まで届くように削孔して内部に挿入するタイプの2種類を開発した(図1、2)。

図1 ■ 流電陽極方式の電気防食工法
[表面設置型]
[表面設置型]
(資料:北陸SIP)
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[内部挿入型]
[内部挿入型]
(資料:北陸SIP)
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図2 ■ 陽極材(内部挿入型)の取り付け手順
(1)配置決め
(1)配置決め
事前調査で鉄筋の位置をマーキング。鉄筋腐食の懸念が大きい範囲は密になるように陽極材の配置を決める(資料:北陸SIP)
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(2)削孔
(2)削孔
直径4cmのコアを削孔。陽極材を固定するためのアンカーを設置する(資料:北陸SIP)
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(3)陽極材を設置
(3)陽極材を設置
陽極材を挿入。腐食防止と伝導性向上のため周囲にバックフィル材を注入する(資料:北陸SIP)
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(4)完成
(4)完成
カバーを取り付けて完成。10~15年は防食効果を発揮する(資料:北陸SIP)
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