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日本最大級の地滑り地帯で、山腹に造った排水トンネルの内部から山頂に向けて避難坑を掘り進める。現場を熟知する地場の建設会社がECI方式で受注し、掘削範囲の見直しなど大胆な提案で施工の安全性を高めた。

地滑り帯を貫く安全策をECIで提案

 福島と新潟の県境付近に、一般車が入れないトンネルがある。その中を1kmほど歩くと、頭上に異様な形の機械が現れた(写真12)。16個のローラーカッターでトンネル・ボーリング・マシン(TBM)のように岩盤を掘削する「リーミングビット」だ。ただし、TBMと違って水平方向には動かない。山頂に向かって24時間当たり8mほどの速さで垂直に掘り進む。

写真1■ 大石西山排水トンネルの切り羽付近。トンネルの天端からぶら下がるように見える「リーミングビット」を回転させて、鉛直上向きにたて坑を掘削する(写真:安川千秋)
写真1■ 大石西山排水トンネルの切り羽付近。トンネルの天端からぶら下がるように見える「リーミングビット」を回転させて、鉛直上向きにたて坑を掘削する(写真:安川千秋)
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写真2■ 掘削を始める前のリーミングビットに日本酒を振りかけて安全を祈願する。試運転の後に掘削を開始した(写真:安川千秋)
写真2■ 掘削を始める前のリーミングビットに日本酒を振りかけて安全を祈願する。試運転の後に掘削を開始した(写真:安川千秋)
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 国土交通省北陸地方整備局が発注した既設排水トンネルの避難坑(たて坑)の工事現場だ。会津土建(福島県会津若松市)が施工する。周辺は日本最大級の地滑り地帯で、山あいを流れる阿賀川に土砂が流れ込めば、大規模な土石流などが生じる恐れがある。福島県が1958年度に集水井や排水トンネルの構築といった地滑り対策事業に着手し、96年度からは国が直轄で対策を講じてきた。

 たて坑は、以下の手順で構築する。まずは山頂部に据え付けた掘削機のロッドの先端に直径25cmの「パイロットビット」を接続。ロッドを継ぎ足しながら、トンネルの天端を貫通するまで下向きに削孔する(図1写真3)。

図1■ 掘削機を引き上げる
図1■ 掘削機を引き上げる
レイズボーリングの施工ステップ。会津土建の資料と取材を基に日経コンストラクションが作成
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写真3■ 山頂側に設置した掘削機の「ビッグマン」。リーミングビットを回転させながら引っ張り上げる(写真:安川千秋)
写真3■ 山頂側に設置した掘削機の「ビッグマン」。リーミングビットを回転させながら引っ張り上げる(写真:安川千秋)
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 続いて直径1.75mのリーミングビットに交換し、引っ張り上げるようにして上向きに32m掘削する。破砕した岩盤のずりは排水トンネル内に落ちるので、台車に積んで搬出する(写真4)。最後に直径1.2mの鋼管を挿入し、地山との間にモルタルを注入して一体化すれば完成だ。

写真4■ リーミングビットで掘削後、排水トンネル内に積もったずりを搬出する(写真:会津土建)
写真4■ リーミングビットで掘削後、排水トンネル内に積もったずりを搬出する(写真:会津土建)
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 リーミングビットを引き上げながら垂直方向に掘削する工法は「レイズボーリング」といって全国的にも珍しい。北陸地整の管内では施工実績がなかった。そこで施工の安全性や確実性を高めるため、建設会社に計画や設計への技術協力を求めるECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式で発注した。