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スーパーカーが「走りを楽しむ」ための会員制ドライブコースの建設現場で、一般道ではありえない18.65%の急な縦断勾配や高い平たん性を持つ“規格外”の道路を舗設する。前田建設工業がグループの総力を挙げて臨んでいる。

 東京都心から車で約1時間。東京湾を望める千葉県南房総市の山間部で、開発面積が39.2ヘクタールに及ぶ大規模な造成工事が佳境を迎えている。フェラーリやポルシェといったスーパーカーを思う存分に運転できる、アジア初の会員制ドライブコースの建設現場だ(資料1)。

資料1■ 舗装工事の様子。コースからはみ出た車が走行する「ランオフエリア」を施工している。アスファルトフィニッシャーを2台並走させて路面の平たん性を高めている(写真:大村 拓也)
資料1■ 舗装工事の様子。コースからはみ出た車が走行する「ランオフエリア」を施工している。アスファルトフィニッシャーを2台並走させて路面の平たん性を高めている(写真:大村 拓也)
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 高級車の販売などを手掛けるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド(東京・港)のグループ会社のコーンズ富浦(千葉県南房総市)が工事を発注。前田建設工業が受注し、グループ会社の前田道路や前田製作所と協力して施工に臨んだ。

 ドライブコースは1周3.549kmで、高低差は86.5mに上る(資料2、3)。約800mの直線に加え、自然の沢地形を生かした最大18.65%の縦断勾配、内側の曲線半径が10mの急カーブなど特徴的な線形を有する。舗装工事では急勾配の施工を実現しつつ、快適な運転を可能にする平たんな路面を確保する必要があった。

資料2■ ドライブコースの北側部分。舗装工事と並行してクラブハウスや宿泊施設の建設を進めている。切り土と盛り土の量はいずれも約150万m<sup>3</sup>で、現場内外における土の搬出入をゼロにした(写真:大村 拓也)
資料2■ ドライブコースの北側部分。舗装工事と並行してクラブハウスや宿泊施設の建設を進めている。切り土と盛り土の量はいずれも約150万m3で、現場内外における土の搬出入をゼロにした(写真:大村 拓也)
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資料3■ 地山が頑強な箇所の切り土部では、泥岩の地層が見えるようにした。ドライブコースの特徴の1つだ(写真:大村 拓也)
資料3■ 地山が頑強な箇所の切り土部では、泥岩の地層が見えるようにした。ドライブコースの特徴の1つだ(写真:大村 拓也)
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 一般に、アスファルト舗装を施工できる縦断勾配は14%ほどが限度だ。そこで舗装工事を担当する前田道路は、事前に約4000tの砕石を用いて自社の機械センターに縦断勾配20%の試験場を造成。急勾配での舗装重機の施工性を確認した。

 平たん性の確保では、路面の凹凸を通常より厳しく管理した。一般的な舗装は長さ3mのプロフィルメーターを用いて凹凸の標準偏差が2.4mm以下になるように管理する。この現場では、0.7mmを目標値に設定した。

 目標値を実現させる具体的な対策は三つある。一つ目は「縦取り機」の利用だ。合材を積んで自走し、走行中のアスファルトフィニッシャーに合材を連続的に供給する重機で、前田道路が新たに導入した。

 アスファルトフィニッシャーは、ホッパーが空になると通常、停車して合材を補給する。舗装の縦断方向の連続性が途切れ、継ぎ目が生じる要因だ。縦取り機の使用で、合材を途切らせずに施工できる(資料4)。

資料4■ 合材を連続的に供給
資料4■ 合材を連続的に供給
舗装を試験施工した際の重機配置(出所:前田道路の資料を基に日経クロステックが作成)
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 二つ目の工夫は、アスファルトフィニッシャーの2台並走だ。ドライブコースの標準幅員は10mで、1台のアスファルトフィニッシャーで施工するには1断面を左右に分けて2回走らせなければならない。左右の境界部分で継ぎ目が生じる恐れがあった。1断面を1回で施工することにより、そうしたリスクをなくす。

 合材の供給ルートの確保が三つ目の工夫だ。日をまたいで舗設する区間は、その境界に継ぎ目ができやすい。長さ800mの直線部など平たん性が特に重要な区間は、施工を1日で終えられるように段取りを組んだ。

 直線部の基層では、1日に約1000tの合材を施工する予定だ。「2台のアスファルトフィニッシャーで1日に施工する量としては類を見ない」と、前田道路南房総PDC作業所の伊藤喜一工事所長は話す。