宮城県内の河道掘削工事で、地場の建設会社が地元企業やベンチャー企業とスクラムを組んで新技術の活用に取り組む。定点カメラの映像を人工知能に分析させて重機の作業状況を可視化。地方発の現場の改善策が見えてきた。
宮城県を東西に流れる1級河川の吉田川で、およそ150万m3に及ぶ河道掘削や堤防の強化といった治水事業が進んでいる。2019年10月の台風19号で堤防の一部が決壊。約5500ヘクタールにわたって浸水被害などが生じたことを受け、国土交通省東北地方整備局が同年度に着手した。
事業には県内の建設会社が数多く参画する。なかでも地元住民の注目を集めるのが、石巻市に本拠を置く丸本(まるほん)組の現場だ。現場の定点カメラで撮影したバックホーによる掘削やダンプトラックの運行の様子を即座に人工知能(AI)に分析させて、現場管理や施工の効率化に取り組んでいる(資料1、2)。
丸本組土木部土木課の相澤秀行工事所長は、現場事務所のモニターを見ながら次のように説明する。「掘削現場と土捨て場における時間帯ごとのダンプの入退場数をリアルタイムに把握している。データを基にダンプの台数などを調整して、渋滞の緩和や手待ち時間の削減に生かす」(資料3)
モニターには掘削現場と、そこから車で20分ほど離れた土捨て場付近にそれぞれ設置したカメラの映像が常時表示される。そこにダンプが現れると、AIがナンバープレートの番号などを瞬時に読み取り、入退場の時間とともに帳票に自動で記録する仕組みだ。帳票は常にモニター上で確認できる。