東日本大震災による液状化被害が目立った千葉県浦安市で、格子状地中壁を居住地に構築する世界初の工事が行われた。宅地間での施工範囲の狭さや埋設物・電線といった障害物の難条件があったものの、小型機の開発などで工事を乗り切った。
宅地間が80cmの隙間でも地盤改良を実現
住宅と住宅の間を縫うようにして地盤内に改良体を構築する、世界初の液状化対策工事が佳境を迎えていた。住宅地の奥まで引いたレール式架台の上を、高圧噴射かくはん工法に対応した地盤改良機が所狭しと稼働する。改良機の幅は、わずか60cm。ケミカルグラウトが開発した「エコタイト工法」に改良を加え、もともと小型だった地盤改良機の装置を分割することで、さらに小型軽量化したものだ。(写真1)
工事の舞台は、埋め立てによって造成された軟弱な地盤の大半が、東日本大震災で液状化した千葉県浦安市だ(写真2)。同市の発注で2016年12月から工事を始め、19年1月に地盤改良の部分が完了した。
浦安市が採用した液状化対策は、TOFT工法(格子状地盤改良工法)だ。地中に構築したセメント系固化材による壁で格子状に囲って、地震時の液状化を抑制する。工事を実施したのは、同市東野地区の2街区合計33戸。地中壁を施工したのは道路や住宅間の境界付近で、その総延長は1242mに及ぶ。(図1)
住宅地でのTOFT工法は初めて。施工を担当する竹中土木・前田建設工業JVの宮澤成宣所長は、「施工可能な幅が80cmしかない場所もあった。宅地内と道路部でそれぞれ現場条件が異なり、必要な技術を新たに開発した」と説明する(写真3)。
宅地内では、高圧噴射かくはん工法を採用。地上から外径60mm程度のロッドを継ぎ足しつつ、地盤を削孔。その後、ロッド先端から水平方向にスラリーを噴射し、ノズルを回転させながらロッドを引き上げることで、周囲の地山とかくはん混合する。改良範囲は1カ所につき、外径1.5m、深さ1.5~9m。削孔間隔を1.3mとし、改良体同士が重なるように柱列状に施工することで、一定の厚さを確保した地中壁とした。