全2304文字
PR

東海環状自動車道の建設現場で、陸上部の鋼床版箱桁では国内最長クラスとなる送り出し工事が進む。3700tの桁を曲線の線形に沿って動かすために、各支点に置いたジャッキの反力や桁のずれを調整。地道な作業の末、無事に津屋川や養老鉄道の上をまたぎ、終着点までたどり着いた。

 岐阜県海津市の工事現場が近隣住民の話題を集めている。橋脚の上で巨大な桁を水平に動かしていく、東海環状自動車道の津屋川橋鋼上部工事の現場だ(資料1)。周囲に高い建物などがないため、遠くからでも現場がよく見える。

資料1■ 4回目の桁の送り出し中。2日間で約130mを移動させた。2022年3月22日撮影(写真:大村 拓也)
資料1■ 4回目の桁の送り出し中。2日間で約130mを移動させた。2022年3月22日撮影(写真:大村 拓也)
[画像のクリックで拡大表示]

 橋を架ける場所は津屋川や養老鉄道と交差するため、地上に大型重機などを設置できない(資料2)。発注者の国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所は、現場の後方ヤードで地組みした鋼桁を移動させていく「送り出し工法」を採用した。この現場では5回に分けて送り出しを進める計画だ(資料3)。

資料2■ 4回目の送り出しの途中。写真右に見える橋脚の右側で、養老鉄道が交差する(写真:大村 拓也)
資料2■ 4回目の送り出しの途中。写真右に見える橋脚の右側で、養老鉄道が交差する(写真:大村 拓也)
[画像のクリックで拡大表示]
資料3■ 「地組みして送り出し」の繰り返し
資料3■ 「地組みして送り出し」の繰り返し
送り出し作業のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
[画像のクリックで拡大表示]

 後方ヤードのスペースは限られており、1回当たりに地組みできる桁の長さは100m前後。回を重ねるたびに桁を継ぎ足すことになり、鋼桁の重量は増す。

 送り出す桁の重量は4回目以降が最大となる。延長約427mの桁と両端に取り付けた100mの手延べ機、連結構を合わせて、総重量は3700tに及ぶ。

 気になるのが、これだけの重量物をどのようにして移動させるのかだ。受注者のIHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体(JV)で現場代理人を務める佐々木智弘所長は「摩擦を切りながら動かしている」と説明する。

 橋脚の上には、桁との間に複数のジャッキを設けている(資料4)。そのうちスムーズな送り出しを可能にするのは、IHIインフラシステムJVが提案したローラージャッキだ。桁と直接接触して回転する「エンドレス滑り装置」と高さ調整ジャッキから成る(資料5)。

資料4■ 桁をジャッキで引っ張る
資料4■ 桁をジャッキで引っ張る
送り出し設備のイメージ(資料:IHIインフラシステム・日本ファブテック特定建設工事共同企業体)
[画像のクリックで拡大表示]
資料5■ 桁の下に見える緑色の回転機構はエンドレス滑り装置のー部(写真:大村 拓也)
資料5■ 桁の下に見える緑色の回転機構はエンドレス滑り装置のー部(写真:大村 拓也)
[画像のクリックで拡大表示]

 「鋼桁が重いため、エンドレス滑り装置の下に高さ調整ジャッキを2台設置している」(IHIインフラシステムJVの佐々木所長)。これらで桁の反力を受け持たせて、摩擦を減らしながら滑るように移動させることに成功した。