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国道から高さ247m上方の斜面に突き出た巨石の落下を防ぐ。岩塊と岩塊上部の斜面とにそれぞれアンカーを打設し、縦方向に張ったワイヤなどで固定。さらに、3次元測量を基に岩塊の重心位置を割り出し、現場に最適な工法を組み合わせて施工した。

2工法併用で急斜面に500tを固定

 「この木の間にワイヤを通せるか」「よし、引っ張れ」。

 岐阜県下呂市の山中。勾配が35~45度ある斜面に、作業員らの声が響く。斜面から突き出した巨大な溶結凝灰岩の落石を防止する工事だ(写真1)。国土交通省中部地方整備局高山国道事務所が発注した。

写真1■ 重さ約500tの岩塊を削孔してロックアンカーを取り付け、岩塊上部の斜面に設けたロープアンカーとワイヤでつなぐ。岩塊が谷側へ転倒しないよう、下部に無機系短繊維を混入した特殊モルタルを吹き付けて充てんした。斜面上部の林道から敷設した仮設モノレールで資材などを運ぶ。2020年2月撮影(写真:日経コンストラクション)
写真1■ 重さ約500tの岩塊を削孔してロックアンカーを取り付け、岩塊上部の斜面に設けたロープアンカーとワイヤでつなぐ。岩塊が谷側へ転倒しないよう、下部に無機系短繊維を混入した特殊モルタルを吹き付けて充てんした。斜面上部の林道から敷設した仮設モノレールで資材などを運ぶ。2020年2月撮影(写真:日経コンストラクション)
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 岩塊の大きさは幅7m、高さ8m、奥行き6mで、重さは約500t。岩塊から247m下には国道41号が通る。

 2011年度に実施した調査の結果、岩塊の安定度ランクは「3」。滑落する可能性が大きいことを意味する。岩塊の下部が浸食され、背面にある母岩との結合力を失って崩れる恐れがあった。落石エネルギーは11万5000kJに達する。

 「当初は、この岩塊を小割り除去する設計になっていた」。周辺の斜面の約20カ所に散在する不安定な岩塊の落石防止工事をまとめて担う金子工業(岐阜県下呂市)の野中達司所長はこう打ち明ける。

 ところが、現地は急勾配で不安定。岩塊にはひび割れが多数あり、小割り作業中に予期しない大割れが生じる恐れもある。作業が危険になるうえ、国道への落石を防ぐ仮設防護壁などが巨大になり、現実的ではない。幹線道路の国道を通行止めにするわけにもいかなかった。

 周辺の斜面にある不安定な岩塊は、ワイヤロープ掛け工法やロープネット張り工法、根固め工法などで対策している。しかし、巨石の重さや勾配のきつさなどを考えると、こうした工法の採用は難しかった。

 そこで、野中所長が発注者に設計変更を提案して、採用されたのが「巨大岩塊固定工法」だ。

 同工法はまず、岩塊と岩塊上部の斜面とにそれぞれアンカーを打設。次に、両アンカー間を縦方向に張ったワイヤでつなぎ、岩塊をつるような形で固定する(写真23)。岩塊の重さに応じてワイヤやアンカーの数を増やせばよいので、巨石にも対応しやすい。

写真2■ 岩塊の側面に取り付けたロックアンカーを岩塊上面から見下ろす。直径50mm、長さ1.6mで削孔した後、長さ2.1mのアンカーを挿入した。ロックアンカーは、岩塊の正面や側面など計12カ所に設けた(写真:日経コンストラクション)
写真2■ 岩塊の側面に取り付けたロックアンカーを岩塊上面から見下ろす。直径50mm、長さ1.6mで削孔した後、長さ2.1mのアンカーを挿入した。ロックアンカーは、岩塊の正面や側面など計12カ所に設けた(写真:日経コンストラクション)
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写真3■ 岩塊上面から後方の斜面を望む。1カ所のロックアンカーから2本の樹脂被覆ワイヤを延ばし、斜面に打設したロープアンカー2カ所とつなぐ。ワイヤは1本当たり20kNの緊張力を加えて固定する。写真左奥に点在する浮き石などは、ロープネット張り工法で対策した(写真:日経コンストラクション)
写真3■ 岩塊上面から後方の斜面を望む。1カ所のロックアンカーから2本の樹脂被覆ワイヤを延ばし、斜面に打設したロープアンカー2カ所とつなぐ。ワイヤは1本当たり20kNの緊張力を加えて固定する。写真左奥に点在する浮き石などは、ロープネット張り工法で対策した(写真:日経コンストラクション)
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 従来の一般的なワイヤロープ掛け工法は、対象岩塊の左右の斜面にアンカーを打ち、主に横方向に張ったワイヤで岩塊を支える。岩塊の重さや形状によって張れるワイヤの数が限られ、巨石ではワイヤが持たないなどの課題があった。