鳥取県内の山間部を走る米子自動車道の4車線化工事で、新技術の試行が進む。PC鋼材の自動緊張や桁の張り出し部の動態観測など、自動化・省力化につながる技術が目白押しだ。受発注者間だけでなく、元請けと下請けの間でも連携を図って、橋梁工事のDXに挑む。
自動化、省力化の取り組みが続々
鳥取県の霊峰として有名な大山の麓で、「橋梁工事のDX(デジタルトランスフォーメーション)」を合言葉に施工の自動化・省力化などを試行している現場がある。西日本高速道路会社が発注し、清水建設が施工する米子自動車道・船谷川橋の上部工事の現場だ(写真1)。4車線化に伴って、3径間PC(プレストレストコンクリート)連続ラーメン箱桁(波形鋼板ウエブ)を新設している。
現場では多くの新技術とICT(情報通信技術)ツールを導入している(図1)。その取り組みの数は、下請け会社のさいとうPC建設の齊藤孝則社長が、「他社の現場では見聞きしたことがない多さ」と驚くほどだ。
現場を訪れた2021年5月末、工事の出来高が8割に到達して約2カ月後に上部構造の中央閉合が迫る状況でも、清水建設は新たな技術の試行に挑んでいた。PC鋼材の緊張作業の自動化だ(写真2)。自動で油圧を制御して緊張管理する仕組みで、油圧ポンプの操作が不要となる。桁両端部の緊張で、これまで総勢6人必要だった作業員を4人に減らせる。
現場代理人を務める清水建設広島支店土木部の吉浦伸明所長は、新技術を積極的に採用する意図について次のように話す。「生産性の高い現場を実現するために、新しい技術をどんどん取り入れている。現場で働く若手の刺激にもなると考えた。副所長と2人体制で管理できたのも、新技術を試行する上で大きかった」