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非GNSS環境下である狭いトンネル内で、車両位置を正確に検知するシステムを開発した。離合場所での無駄のないすれ違いを実現して、生産性と安全性の向上を目指す。坑外の車両検知システムとも自動連携させている。

大型重機の“出合い頭の引き返し”を防ぐ

 高知県日高村を流れる日下川に、1つの河川では日本初となる3本目の放水路トンネルが建設されている。そのうち、のみ口側の工区を施工する鹿島が、GNSS(衛星を用いた測位システムの総称)の電波の届かない坑内でも車両位置を把握できるシステムを開発し、導入している(写真1)。坑外の車両位置が分かるシステムと一元化した。

写真1■ 運転席から見た坑内の様子。タブレット端末に表示される自車と他車の位置を基に、離合場所で効率的にすれ違えるようになる(写真:鹿島)
写真1■ 運転席から見た坑内の様子。タブレット端末に表示される自車と他車の位置を基に、離合場所で効率的にすれ違えるようになる(写真:鹿島)
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 日下川の放水路のトンネルは、一般の2車線の道路トンネルと比べると幅が7割程度と狭い。覆工コンクリートの打設後は、25t級のダンプトラック同士は200m置きにある離合場所でしかすれ違えない。それ以外でかち合うと、離合場所まで引き返す羽目になる(写真2)。

写真2■ 車両がすれ違う様子。放水路トンネルは幅が狭い(写真:鹿島)
写真2■ 車両がすれ違う様子。放水路トンネルは幅が狭い(写真:鹿島)
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 運搬効率が著しく低下する他、後退時には事故を起こす恐れがある。かといって、離合場所以外でもすれ違える10tダンプトラックに変更すれば、1回当たりの運搬量が減る。

 そこで鹿島は、坑内の100m置きに設置したデータ・音声通信用のWi-Fiのアクセスポイントを利用し、その間にビーコン(発信機)を設置。Wi-Fiとビーコンを組み合わせた珍しい測位アルゴリズムを適用した。ビーコンを取り付け、運転席へタブレット端末を搭載するだけという最小限の事前準備と費用で実現している。

 さらに同社が保有していた、坑外の車両位置をGNSS測位で把握する運行管理システム「スマートG-Safe」とも連携。坑内外の車両位置を1つのシステムで一元管理できるようにした(図1)。

図1■ 坑外と坑内の位置管理システムをスムーズに切り替える
図1■ 坑外と坑内の位置管理システムをスムーズに切り替える
坑内外の位置情報把握システムの概要(資料:鹿島)
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 「運転手が操作する必要はない。坑内外でシステムが勝手に切り替わって、車両の位置を検知してくれる」。鹿島生産性推進部ICT・CIM推進室の森本直樹次長はこう話す。現場事務所のモニターでは、現場全体の車両を管理できる(写真3)。

写真3■ 坑内外の位置情報は現場事務所のモニターで確認できる(写真:鹿島)
写真3■ 坑内外の位置情報は現場事務所のモニターで確認できる(写真:鹿島)
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 「掘削段階では1つの協力会社だけが関わるため、対向車両の離合についてルールを定めておけば現場を回せる。ところが、覆工コンクリートの打設が始まると、1日延べ40台のアジテーター車が入る。そうなると現場内のルールだけでさばけない。それを見越し、1年前から本社へ開発を依頼していた」。日下川新規放水路(呑口側)工事事務所の女賀崇司次長は、こう振り返る。