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坑内は誤差25mで車両位置を検知

 システムは感覚的に把握できる簡易な表示にこだわった(図2)。自車は緑色、他車はオレンジ色で表示し、走行方向を矢印で示す。ダンプトラックかアジテーター車かといった車種、25tや10tなどのトラックのサイズも一目で分かる。加えて、切り羽に到達した回数をカウントするため、運搬車両の延べ台数に応じて、リアルタイムで進捗管理できる。

図2■ 他の走行車両が一目で分かる
図2■ 他の走行車両が一目で分かる
緑の丸が自車の位置、オレンジの丸が他車の位置を表す(資料:鹿島)
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 これまでは対向車両を目視で確認していたために、本当は先に行けるにもかかわらず離合場所で待機する事態が生じ、時間をロスしていた。開発したシステムによって、トンネル掘削の1サイクル当たりの車両待機時間を10%削減できる。

 さらに、坑内で最大時速30kmに達する車両を25m以内の誤差で位置検知する精度を持つ。

 「測位精度を上げてほしいと現場から要請があった。費用や時間をかければ可能だが、もともとトンネル内にあるアンテナや安いビーコンを使う比較的低コストな手法では、誤差25mが限界だった」(森本次長)

 ただ女賀次長は、「実際には坑内を時速20km程度に制限していおり、25mの誤差が危険側に働いたとしても、目視確認で対応可能な範囲だ。運用には全く支障がない」と説明する。

 課題だった坑内と坑外のシステム切り替えも、なめらかだ(写真4)。坑口付近では坑内外どちらの電波も受信するため、画面の自動切り替えが難しかった。そこで、例えば坑内でWi-Fiの電波を受信し続けていて、坑口付近でGNSSの測位を感知したら、坑外用のシステムに切り替えるというロジックを導入した。

写真4■ 坑外では鹿島が開発した「スマートG-Safe」が起動する。すれ違いの管理の他、積載物の輸送・出来形管理を自動化した車両運行管理システムだ(写真:鹿島)
写真4■ 坑外では鹿島が開発した「スマートG-Safe」が起動する。すれ違いの管理の他、積載物の輸送・出来形管理を自動化した車両運行管理システムだ(写真:鹿島)
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 システム導入当初は掘削を担当する下請け会社の期待値は低く、車両の位置検知を予備的にしか見ていなかった。しかし覆工コンクリートの打設が2020年5月から始まり、大々的にシステムが運用されると、下請け会社の意識が変わってきたという。「システムの説明を我々に求めてくるようになった」。女賀次長はうれしそうに話す。