2023年度の全線開通を目指す新東名で土量306万m3、高さ70mの大規模盛り土を含む工事が最盛期を迎えている。中日本高速道路会社は同社初の「ICTフル活用工事」として位置付けた。出来形管理が中心だった従来のICT土工の枠組みにとらわれず、受発注者間のやり取りを効率化する。
施工履歴データを維持管理につなげる
新東名高速道路川西工事は、土量306万m3、高さ70mの大規模盛り土と延長約1.2kmのトンネル掘削を含む「塩沢工区」および、土量82万m3の切り土と橋梁下部工事を含む「向原工区」に分かれる。両工区を合わせた工事を中日本高速道路会社が発注し、清水建設・岩田地崎建設JVが211億4000万円で受注した。塩沢工区の盛り土材には、7km離れた向原工区だけでなく周辺の複数現場で発生した土砂も受け入れて使う。
中日本高速は川西工事を同社初の「ICT(情報通信技術)フル活用工事」に位置付けた。「出来形管理が中心だった従来のICT土工の枠組みにとらわれず、受発注者間のやり取りを効率化する」と、中日本高速秦野工事事務所松田工事区の中村洋丈工事長は意気込む。28万m2という広大な盛り土場の敷地全体を可視化したり、盛り土の土量や品質を管理したりするのが狙いだ。受発注者双方の現場事務所や本社に加え、専門工事会社やソフトウエアベンダーも一体で取り組む(写真1、2、図1)。
図1■ 3次元データを一気通貫で活用



塩沢工区の盛り土部にはスマートインターチェンジのランプが併設されるため、複雑な形状をしている。高い精度が要求される起工測量や出来形測量は、ドローンや地上型レーザースキャナーなどを組み合わせて測量会社やJVが実施。一方、精度が緩和される土量管理や出来高検査のための測量は、土工事を担う専門工事会社がドローンを自ら飛ばす。「取得した3次元点群データは、土配計画の検討などにも活用する」とJVの蔵重幹夫副所長は話す。