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トンネルの切り羽で一堂に会していた「岩判定会議」に、大林組がウェブ会議システムを導入した。発注者のいる事務所から山間部のトンネルの現場へは、往復の移動時間だけで3時間程度を要する。汎用性のある技術を使って、臨場感を保ちながら遠隔地での岩判定評価を可能にした。

カーオーディオに着想得た音響システムを採用

 福井と岐阜の県境で、国土交通省近畿地方整備局福井河川国道事務所が発注した「冠山峠道路」のトンネル工事が進む。現場は、携帯電話の電波が届かないほどの山間部だ。発注者の事務所から切り羽までの移動には、往復で約3時間を要する。そんな現場で施工者の大林組は、切り羽で一堂に会していた「岩判定会議」の遠隔化を2019年11月から試行している(写真1)。

写真1■ 岩判定会議を遠隔臨場で実施している様子。現場では三脚に固定したスマートフォンでビデオを撮影する(写真:大林組)
写真1■ 岩判定会議を遠隔臨場で実施している様子。現場では三脚に固定したスマートフォンでビデオを撮影する(写真:大林組)
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 トンネル工事では設計時に地山状況を正確に把握するのが困難なため、掘削しながら支保の設計を見直す。そのため、施工中に地山状況を確認して最適な支保を協議する岩判定会議を開く。従来は評価者となる2、3人の発注者と第三者判定員、施工者が切り羽で立ち会っていた。

 「近畿地方整備局では中部縦貫自動車道の完成に向けて、10本ほどのトンネル工事を同時に稼働させている。発注者が複数のトンネルの現場を抱えていると、立ち会いなどの日程調整が大変だ。そこで遠隔地からの判定を提案した」。大林組冠山峠2号トンネル工事事務所の柏原宏輔工事長は、こう話す。発注者のうち主任監督員が現場へ向かい、残り2人は遠隔地での参加となる(写真2)。

写真2■ 国土交通省の職員が遠隔地から岩判定会議に参加している様子。確認したい項目を質疑する(写真:国土交通省)
写真2■ 国土交通省の職員が遠隔地から岩判定会議に参加している様子。確認したい項目を質疑する(写真:国土交通省)
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 ウェブ会議システムには、汎用性のあるアプリケーションを使用している。通話アプリのZoomと、帳票アプリのeYACHO(イー・ヤチョウ)だ(図1)。動画の撮影にはスマートフォンを使う。第三者判定員が現地で切り羽を撮影しながら説明した内容などを基に、評価を下す。ハンマーで岩を打撃する内容もカメラを通して見る。

図1■ 現場と遠隔地で同時評価が可能
図1■ 現場と遠隔地で同時評価が可能
ウェブ会議システムを使った岩判定の遠隔臨場の作業フロー(資料:大林組)
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■ 3人の評価者が点数を入力
■ 3人の評価者が点数を入力
岩判定の帳票。赤い囲み内は評価者が入力した点数。下は切り羽写真(資料:大林組)
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