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2018年9月に発生した北海道胆振東部地震で大規模な斜面崩壊が相次いだ北海道厚真町。土色の山肌がむき出しになった被災地で、急傾斜地崩壊対策工事や治山工事が進む。同町富里地区の現場では、急斜面の作業に無人の油圧ショベルを投入して安全を確保した。

崩れ残った軽石層を除去して法枠設置

 2018年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震は、震源地に近い北海道厚真町で震度7を観測した。この地震では約3000万m3の土砂が一気に崩落した。

 震災発生から1年余り。むき出しだった崩壊斜面は人の手で覆われ始めている。被害の大きかった厚真町富里地区で施工中の急傾斜地崩壊対策工事を取材した(写真1)。

写真1■ 富里浄水場の北側斜面で表層崩壊が発生した北海道厚真町富里地区。厚真町が65億円を投じて建設した浄水場は、地震が発生するわずか1カ月前の2018年8月に稼働したばかりだった。19年10月撮影(写真:日経 xTECH)
写真1■ 富里浄水場の北側斜面で表層崩壊が発生した北海道厚真町富里地区。厚真町が65億円を投じて建設した浄水場は、地震が発生するわずか1カ月前の2018年8月に稼働したばかりだった。19年10月撮影(写真:日経 xTECH)
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 富里地区の周辺の地層は泥岩などで形成された硬い振老(ふれおい)層の上を、樽前山などの噴火による降下火砕物の堆積した軽石層が覆っている。地震被害を調査した土木学会の報告書では、「軽石層が地震による強い揺れで不安定化し、表層崩壊が発生した」と分析する。

 富里地区の復旧工事では、約1万2000m2の範囲に2m間隔の吹き付け法枠を設けて、振老層の風化による表層崩壊を防ぐ。法枠を硬い泥岩に固定するために、まずは表層に残る軽石層を油圧ショベルで掘削して、振老層を露出させる必要がある。課題は急斜面での作業だ。

6tの重機をワイヤで吊るす

 斜面の中腹から勾配が急になり、山頂付近は35度を超える。油圧ショベルの登坂能力は一般的に30度ほど。そこで現場では、斜面上部からワイヤで油圧ショベルを吊り下げて作業した。施工者である伊藤組土建・草野作工地震災害復旧工事特例JVの森良之所長は「作業員の安全を考え、油圧ショベルの無人化工法の1つであるセーフティークライマー工法を導入した」と話す(写真2)。

写真2■ 富里地区の現場で導入した「セーフティークライマー工法」による施工の様子。急傾斜地で安全に作業すべく、ワイヤで吊り下げた油圧ショベルを遠隔操作する(写真:伊藤組土建)
写真2■ 富里地区の現場で導入した「セーフティークライマー工法」による施工の様子。急傾斜地で安全に作業すべく、ワイヤで吊り下げた油圧ショベルを遠隔操作する(写真:伊藤組土建)
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 同工法は、高所傾斜地で油圧ショベルを遠隔で操作する技術だ。斜面上部の2点からV字形に張ったワイヤに専用の油圧ショベルを吊り下げて作業する。オペレーターはワイヤを巻き取りながら油圧ショベルを動かす。設計の見直しによる工区拡大をきっかけに、この工法を導入した。

 油圧ショベルの車体重量は約6tあり、ワイヤのアンカーは斜面上部に残る立ち木を使う。離れた場所から操作できるため、安全性を確保しやすい。「胆振東部地震の復旧現場では人手の確保が難しい。安全性が高く、施工しやすい環境を整えた点は、作業員の募集にも役に立った」と森所長は明かす。

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