豪雨でもないのに斜面が崩れる。管路を定期点検していたのに大規模な断水を引き起こす。調査や設計、維持管理の失敗で事故・トラブルを招くケースは後を絶たない。最近起こった6つの事例を取り上げ、何が盲点だったのかを探る。

特集
追跡!建設事故トラブル
思わぬ被害を招いた調査・設計、維持管理の盲点
目次
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厚さ1mmの粘土層が“一枚岩”崩す
西九州道の法面崩落
「一枚岩」の地層に潜んでいた厚さ1mmにも満たない粘土層。このボーリング調査で判別できないほど薄い層を滑り面とした道路法面の崩落が、今年10月1日に佐賀県伊万里市で起こった。
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“水”を甘くみた盛り土が凶器に
和歌山の斜面崩壊
崩れない盛り土を造るために最も重要なことは、水の影響をよく見極めることだ。対策を誤れば崩壊し、周囲に多大な被害を及ぼす。
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見逃された土砂流出リスク
新潟の路面陥没
新潟県出雲崎町の県道で2017年12月、路面が沈下しているとの通報を受けて現場を確認しながら、その下の空洞に気付かず、陥没を防げなかったという事故があった。現地を調査した県職員は、よくある圧密沈下だろうと考え、緊急性はないと判断してしまった。
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4000万円の賠償請求に発展
富山の倒木事故
至る所に潜む道路管理のリスクにどこまで予算を割いて対処すべきか、自治体は頭を抱える。富山県南砺市で起こった倒木事故は、死者が出なかったケースとしては異例の約4000万円もの損害賠償請求に発展した。倒れたのは道路脇の斜面に自生する自然木で、一見すると健全。目視点検だけでは危険性を見抜けなかった。
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前例が無い送水管の疲労損傷
山口の大規模断水
過去に疲労損傷した例はないのだから、きっと大丈夫だろう──。こんな思い込みが点検の油断を生み、異常のサインを見逃すことがある。
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埋設管破断で3万人超が足止め
小田急の線路陥没
橋やトンネルと異なり、直接見ることが難しい地下管路は点検が手薄になりがちだ。地上からの目視点検にとどまり、トラブルが起きてから異常に気付くことが多い。今年4月に神奈川県伊勢原市で起こった下水道管の破断による線路陥没事故も、維持管理が後手に回った典型例だ。