豪雨や地震などが多発した2018年。防災・減災効果のあるハード施設で身を「守る」、避難体制を整えて「逃げる」といった施策だけでは、犠牲者を減らせないことが露呈した。そこで浮上するのが、安全な土地への居住などで災害を免れる「免災(めんさい)」だ。災害をかわして災害リスクをゼロにする新機軸が注目を集めている。

さらば、災害リスク
「守る」「逃げる」では限界、浮上する「免れる」対策
目次
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止めません?危険地に住むの
全国各地で多発する自然災害。被害を受けるたびに莫大な復旧費を充てることになる。犠牲者が出るのは、災害リスクが高いと公表されている場所ばかり。人口減少時代に突入し、危険地に住まいを構える事態を見過ごしていいのか。
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いまだ甘く見られる災害リスク
災害リスクの公表や周知が進んでいるからといって、住民が必ずしもそのリスクを正しく認識しているとは限らない。他方、いまだに十分に認識されていない災害リスクもある。今年の災害で露呈した「甘く見られているリスク」を追う。
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危険なのに抽出されない「谷埋め地」
大規模盛り土危険地
都市部の住宅街を襲った阪神大震災や東日本大震災の大規模地震、さらには福岡県西方沖地震、芸予地震などの中規模地震で例外なく起こる被害がある。谷地を埋め立てた盛り土の被害だ。
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高級臨海住宅街で牙をむく浸水リスク
高潮危険地
9月4日、主に関西で猛威を振るった台風21号。高潮・高波で想定外の浸水被害が生じた人工島は、実は関西国際空港以外にもあった。大阪湾に浮かぶ兵庫県芦屋市南端の南芦屋浜だ。
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移転と誘導で危険地から脱出
「安全な土地」信仰は既に広まっている。危険な土地に既に住んでいる人には移転を、まだ住んでいない場合は住居の開発抑制などを促す制度が生まれつつある。災害を回避することで、これまでに要したハード整備などの費用を大幅に抑える効果が期待できる。
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条例で危険地に住まわせない
開発抑制
河川改修などの治水対策だけでは洪水を防ぐことが困難だということで、降った雨を河川区域外で一時的に貯留し、河川への流入を遅らせる流域対策を含めた「総合治水対策」の考えが誕生したのが1980年代だ。全国各地で総合治水計画が作成され、遊水池や調節池が次々と造られた。
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全国初!料率変えた洪水保険に挑む
居住誘導
新しい洪水保険制度の確立によって、私有財産権に制約を課すことなく居住誘導を図る─。この制度の構築に本気で挑もうとしているのが、関西広域連合だ。個々の自治体では対応が難しい広域事務での連携を進めるために、2010年に複数の府県から成る全国初の広域連合として産声を上げた組織だ。
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コンパクトシティーで目指す「危険地除外」
人口減で将来コンパクトになる居住区域から災害危険地を除外するなど、未来に向けた街づくりが始まった。防災部局と都市部局の連携が密に取れてきて、防災面からコンパクトシティーを論じる自治体が増えている。